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オランダとのクリエイティブ連携

新たな菓子文化定着のきっかけに

オランダの有名パティシエに学ぶ講習会 佐賀県では、2016年10月31日にオランダ王国大使館と「クリエイティブ連携・交流協定」を締結し、佐賀県とオランダとのクリエイティブ分野での連携や、文化芸術・スポーツをはじめとする幅広い分野での交流を進めていくこととしています。

 昨年末こちらの誌面にて、佐賀県菓業青年会がオランダで開催された日蘭交流イベント「ジャパン・フェスティバル2017」で佐賀銘菓「丸ぼうろ」の製作実演を行ったことを紹介しました。「丸ぼうろ」とはポルトガル伝来の南蛮菓子で、約350年前佐賀の人が長崎出島に学びに行った際にオランダ人や中国人から製法を教わり、佐賀に持ち帰ったとされています。今では佐賀の菓子屋の大半がそれぞれで自慢の「丸ぼうろ」を焼いており、その素朴な風合いは飽きることのない味として、進物用そして観光客の佐賀土産として利用されています。

 本年は明治維新150周年を記念して「肥前さが幕末維新博覧会」が開催されます。幕末・佐賀藩はオランダとの交流によって世界に目を向ける人材を育成し、先進科学技術を導入することによっていち早く近代化を成し遂げました。博覧会ではパビリオンの一つとしてオランダハウスが開館します。オランダハウスでは幕末維新期に西洋の先端技術を取り入れ明治維新の原動力となったオランダとの交流の歴史を顕彰するとともに、クリエイティブ分野をはじめ世界で注目を集める現在のオランダ及びオランダとの交流事例を紹介し、アーティスト・イン・レジデンス(滞在型創作活動)や水辺を活用したアクティビティなど、未来に向けた交流活動が行われます。

オランダの有名パティシエに学ぶ講習会 またオランダハウスに隣接するオランダの食文化を伝える「ダッチカフェ」では、オランダの伝統菓子「ダッチアップルパイ(アップルタルト)」及び「ストロープワッフル」を提供します。来年1月までの博覧会期間中、その菓子を月替わりでカフェに納めるという形で、佐賀県菓業青年会も協力することになっています。そこでオランダ菓子について全くノウハウのない我々は、オランダアムステルダムの有名菓子「Lanskroon(ランスクルーン)」のパティシエを1週間招聘し、その製法を菓子業界のみならず、一般の菓子作り愛好家、そして製菓学校の学生にまで伝授するワークショップを開催しました。

 行政、イベント会社の協力を仰ぎながら「肥前さが幕末維新博覧会」のプレイベントとした、計3回のワークショップはどれも満席で、アップルパイ、ストロープワッフル共に決してきらびやかな菓子ではありませんが、素朴さの中にこだわりをいっぱい詰め込んだ佐賀の郷土菓子に通じる部分があり、佐賀とオランダの職人との交流は、新たな菓子文化が佐賀に根付くきっかけになったと思っています。

 「肥前さが幕末維新博覧会」のキャッチフレーズで「その時、佐賀は世界を見ていた。そして今、佐賀は未来を見ている」とあります。当時、国内最先端の技術を有した佐賀藩は、日本中から注目される存在であり、他藩に先んじて世界に目を向けていた先見性を持つ藩でありました。明治という新しい時代に、日本の近代化を進め、今の日本の大きな形を作ったのは、実は佐賀の人々。この明治維新150年を機に、県内外に佐賀の人々が成し遂げた素晴らしい功績を、また、当時から連綿と続く佐賀の素晴らしさを多くの方に広めたいと思っています。そして350年前の佐賀の菓子職人が「丸ぼうろ」を我々に残したように、次は我々がストロープワッフルを未来の菓子職人に残す番だと思っています。

 佐賀県菓業青年会会長・大串久昭

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