各地の菓子店探訪
秋田県菓子店の投稿

旭南高砂堂

産物や風物を題材にしたお菓子

山ぶどうせんべい 秋田市通町にある高砂堂の三男である父、塚本三郎が昭和四十二年に、秋田市旭南に「旭南高砂堂」を開業いたしました。

 父は、上野凮月堂様での洋菓子修行をし、実家である高砂堂に勤務いたしました。
 二代目である私は、大学卒業後二年間のサラリーマン生活を経て、神田駿河台下の「さゝま」様で三年間、住み込みの修業をさせていただきました。

 二十八歳で帰郷し、三十七歳で父から家業を引き継ぎました。それまで和洋菓子の割合は三対七程度でしたが、現在は半々になっています。

 当店の代表的な銘菓は、秋田県産の山ぶどうを使った「山ぶどうせんべい」、秋田県の代表的なお菓子である「諸越」にインスパイアされて創作した「焦がし諸越饅頭」などがあります。焦がし諸越饅頭は平成二十九年の全菓博で観光庁長官賞をいただきました。

 一町内に一軒のお菓子屋さんの時代から一町内に一軒のコンビニ、の時代になってしまいました。物量では太刀打ちできないので、農業県である秋田の特色ある産物や風物を題材にしたお菓子作りをしていきたいと思っています。

 さて、組合活動に目を転じます。平成二十九年の全菓博のあと、十六年の長きに亘って勤められた故後藤一前理事長の後を継ぐ形で、伝統ある秋田県菓子工業組合の理事長を拝命いたしました。

焦がし諸越饅頭 秋田県の人口は百万人を大きく割り込み、全国的に少子高齢化が進む中でも特にその傾向が顕著になっております。

 高齢化や後継者不足もあり、昭和三十年代に六百名にのぼった組合員は、今や八十五名にまで減少しています。コロナ禍の影響で、ここのところはなかなか組合としての事業を組めない状況ですが、中央会の制度を使わせてもらい、原材料表示や、栄養成分表示のセミナーなどを開催しました。

 よく言われるのが、「組合に入っているメリット」です。思うに、各県に菓子工業組合があり、またその集合体としての全菓連があることによって、行政からの情報が入りやすくなり、また行政に対する要望が通り易くなる、というのが一番のメリットです。

 良い例がハサップでのB基準です。我々小規模事業者が個々ではできない交渉を、全菓連をはじめとする食品業界の団体が現場での実態を拾い上げ、実現しました。

 菓子工業組合が生まれた時代や理由と現在の存在意義は変わってきていて、そこにはきちんとした存在理由があるのだということを、各組合員に丁寧に説明することが必要だと思います。

 働き方改革、賃金や原材料価格の驚異的な上昇など、私たちを取り巻く状況は急激に変化し続けています。また、IT技術の活用など、中小零細菓子店でも避けて通れない課題があります。

 今後も同じ課題を抱えている仲間として、菓子工業組合を大切にしていきたいと思います。

 秋田県菓子工業組合理事長・塚本高