各地の菓子店探訪
山梨県菓子店の投稿

株式会社 平和堂

切山椒とあべかわ餅のその後

切さんしょう切さんしょう もう8年前になりますが、こちらの新聞に2回文章を書かせていただきました。

 1度目は1月号で、こちら山梨は甲府盆地で冬に愛される菓子「切山椒」について、2度目は8月号で特にお盆の時に好んで食べられる「あべかわ餅」についてです。

 切山椒については、上新粉を練った餅菓子であること、山椒の香りが強く好き嫌いがはっきり分かれること、その時期工場内は山椒の香りが1日じゅう立ち込め、県外出身の私などは頭痛を起こしてしまうこと、これが美味しいと思えないと真の甲州人にはなれないといったことを書かせていただきました。

 あべかわ餅につきましては、静岡のそれとは異なり、餅にきな粉と黒蜜をつけて食べること、盆棚の飾り付けに使う際、ぶどうの葉に載せてお供えするのがいかにもぶどうの産地山梨らしくて好きだ、ということなどを書かせていただきました。

あべかわ餅 さて、話は変わりますが、世の中はネット社会です。私が書かせていただいた切山椒についての文章もネットに載っておりまして、ニュースのネタ探しをしてらした地元のNHKの記者さんが私の拙い文章にたどり着き、色々とやりとりをさせていただいて(偶然にもこの記者さんが私と同じ福島出身ということもあり話はトントン拍子に進んで)テレビ取材となりました。

 そしてこの時2つの気付きがありました。

 1つは、社員さんやパートさん達がどこかウキウキしていていつもより楽しげな雰囲気になったことです。作業中はマスクをつけているので映るはずもないのに、口紅はどうしようかなどと冗談を言うパートのおばさま方にツッコミを入れる社員さん達の会話は微笑ましいものでした。また個人的には「どういうつもりでこの菓子を作っているのか」というオーソドックスなインタビューを受けることで、改めてその思いを整理することができ初心に帰ることができました。

かすり家社長(右)と筆者(左) 2つ目は、放送されたこのニュース映像がNHKのウェブサイトに載ることで、山梨のみならず全国の、大げさに言えば全世界の人達に情報が届くので反響は少なからずあるということです。実際に沖縄に住む方からもお問い合わせをいただき切山椒について知っていただくこととなりました。またこの記者さんがおっしゃっていましたがNHKのみならず新聞社やテレビ・ラジオ局は常にネタを探しているのでこちらからプレスリリースすると喜んでくれるし、案外簡単に取り上げてくれるので宣伝にもなるということです。多少図々しいくらいがいいのだそうです。

 さて、8年前は頭痛を起こすほど私にとっては強烈な香りだった切山椒ですが、おかげさまで今ではこれがクセとなってしまい、製造が本格化する1月が待ち遠しくてなりません。ついにこれで私も真の甲州人と呼んでもらえるといいのですが。

 株式会社平和堂専務・大沼美洋