各地の菓子店探訪
長崎県菓子店の投稿

佐世保・早岐 「草加家」

伝統と革新で地域を繋ぐ郷土菓子

髙木絢生さん

 長崎県北部の佐世保市早岐(はいき)地区には、400年以上の歴史を誇る「早岐茶市」があります。漁師や農民が山海の幸を持ち寄り物々交換を行ったことをルーツとするこの市は、今も5月になると多くの屋台と人々で活気に溢れます。そんな歴史ある街の閑静な住宅街に店を構えるのが、和菓子店「草加家」です。

 今回お話を伺ったのは、2代目の父・龍男さんを支える髙木絢生(けんしょう)さん。絢生さんは県外で工場の生産管理業務に従事していましたが、2023年に帰郷。現在は製造から営業まで幅広く携わり、佐世保菓青会のメンバーとしても活躍しています。

かんころ餅 パッケージ(小判型)

 店名の「草加家」は、埼玉県名物「草加せんべい」に由来します。絢生さんの祖父が若かりし頃、関東地方で様々な職を経験する中で草加せんべいの技術を習得。その確かな技を携えて地元・佐世保で創業したのが始まりでした。御年94歳になる祖父は今もなお現役の職人としてせんべいを焼くことがあるといいます。絢生さんはその傍らで、祖父から孫へと直接伝えられる伝統の技をしっかりと継承し、一枚一枚丁寧にせんべいを焼き続けています。

 現在、草加家の主力商品として多くの人に親しまれているのが、長崎を代表する郷土菓子「かんころ餅」です。「かんころ」とは、さつまいもを薄切りにして茹で、天日干しにした保存食のこと。これを餅米と蒸し上げ、砂糖を加えて搗き混ぜると、素朴で優しい甘さのかんころ餅が完成します。

 トースターで焼けば、外はカリッと中はモチッとした食感と、芋のホクホクとした風味が際立ちます。草加家では熱殺菌技術により日持ちを大幅に伸ばし、土産物店などへ販路を広げました。

ケーラン

 地域との絆を象徴するのが、早岐名物「ケーラン」の復活です。米粉の生地で餡を包み巻いたこの餅菓子は、かつて茶市の定番でしたが、作り手がいなくなり一度は姿を消しました。しかし、父・龍男さんが地域住民の記憶を頼りに試行錯誤を重ねて再現。今では地域の歴史と記憶を次世代へつなぐ大切な存在となっています。

 また、地域の農産品を活かした商品づくりにも積極的です。隣町・川棚町のブランド「小串トマト」は、良品のみが販売され規格外品は一切が処分される、徹底した品質管理がなされてきました。地元の飲食業者も使えないでいた小串トマトですが、農家、農協との協議の末に、規格外品のピューレへの加工を実現。今では地元カフェの通年メニューにも使用され、生産者と共存しつつ地域産品の活性化に役立っています。このほかいちごやレモンといった地元産の果実を使った最中の開発など、生産者と手を取り合ったモノづくりを徹底しています。

かんころ餅 イメージ

 現在、かんころ餅の原料となる「かんころ」は生産者の高齢化により減少しており、伝統の継続は容易ではありません。それでも絢生さんは「お客様と、供給してくれる農家さんがいてこその商売」と語ります。地元の生産者や消費者と手を取り合い、三代続く暖簾を守り抜こうとするその姿は、地域の未来を担う頼もしい光となっています。

 全菓連青年部九州ブロック長・田口一男

店舗データ

草加家
住所:長崎県佐世保市重尾町210