各地の菓子店探訪
大阪府菓子店の投稿

株式会社 梅仙堂

動き続けるブランディング

前田有世さん

 今回は、江戸時代(宝暦年間)に大阪市生野区大池橋東詰にて創業し、その後大阪市北区芝田(大阪梅田の超中心地!)に本社・本店を構える株式会社梅仙堂さんをご紹介いたします。2020年に入社され、営業で奮闘されている前田有世さんにお話を伺いました。

~御社のことを教えてください~

 「天狗の岩おこし」として江戸時代に創業した暖簾を、大正9年に私の曾祖父が引き継いだのが梅仙堂の始まりです。当時からモチーフとして愛されていた天狗のキャラクターを、今も大切にしています。古い資料を見返すと、祖父の時代には様々な天狗のバリエーションを手がけており、クリエイティブな人であったことも改めてわかりました。自然の風味豊かで変わらぬ味を守るだけでなく、より親しみやすいデザインを追求する姿勢は、梅仙堂に伝わる大切な精神だと思っています。

天狗おこし人形

~入社してからのご苦労などあれば~

 おこしは、うるち米、水あめ、砂糖をベースに作られ、そこに生姜や胡麻、ピーナッツなどを入れたものが基本ですが、梅仙堂ではキャラメル、アーモンド、苺ミルク、チョコレートなど、洋風な味付けのものも積極的に取り入れ商品開発をしてきました。それでもまだおこしは伝統的なイメージが強かったため、入社後はとにかく若い人や海外の人に向けて、新しい商品を開発しようと奮闘しました。元々おこしは自然な原材料から作られているため、よりオーガニックな材料や洋風の味付けを目指し、工場に入って試作を重ねてもらいました。ただ、当時は私自身若かったこともあり、現場とぶつかることも多く、今から思うと長年みんなが必死に守ってきた梅仙堂ブランドを私が壊そうとしていると捉えられていたのだと思います。今となってはそう思いますが、当時は色々と行き詰まってしまい、社内外の人にも相談し、新ブランドを立ち上げての商品開発に舵を切ることにしました。そうして生まれたのが「うめだOKOSHIファクトリー」です。

OKOSHIファクトリー

~新ブランドへの反応は~

 苦労してようやく3商品を作り上げ、「うめだOKOSHIファクトリー」が立ち上がりました。軽い食感にこだわり、思い切って主原料のうるち米を小麦パフに変更して作った、新食感のおこしです。実はおこしの定義は〝穀物を水あめで固めたもの〟で、すでに歴史の中で主原料は粟からうるち米へと変化しています。それなら、さらに進化させてもいいんじゃないかと(笑)。ただ、新ブランドや新商品を作っただけでは、その良さやこだわりを広く知ってもらうことはできないので、ホームページのリニューアル、ECサイトの作成、SNSアカウントの立ち上げなど、様々なことに一気に取り組み、催事への出店も積極的に行い、自らPRに努めました。スロースタートでしたが、徐々にそれらは実を結び、大阪市内の一流ホテルさんからお声がけいただき、客室のアメニティーに採用いただいた時は本当に嬉しかったですね。

 その後の大きな転機として、弊店も加盟している「大阪産(もん)名品の会」の、2025大阪・関西万博への出店があります。名品の会の出店内定が決まり、すぐに父である社長が会に対して出店を申し込んでくれたおかげで、いよいよ「梅仙堂」「うめだOKOSHIファクトリー」が揃って万博に出店することになったのです。世界の人たちにブランドと商品を知ってもらえる千載一遇のチャンスと捉え、またもや新商品を考える苦悩の日々が始まりましたが、そのおかげでヒット商品「キャラメルナッツおこしバー」が生まれたのです。

 万博会場内で、日に日に販売数が増え、リピーターも増えていくのを見て、充実感に包まれたことを覚えています。今では、新大阪駅をはじめ大阪市内のお土産売店での取り扱いも増えています。

キャラメルナッツおこしバー

~今後の展望は~

 100年を超える歴史と、今まで支えてくださったお客様を大切にしつつ、新ブランドもさらに成長させ、梅仙堂としてもっと売上を拡大していきたいです!

パッケージ

 今回、有世さんのお話を伺い、穏やかな笑顔の中に時折見せる目の鋭さに、しっかり未来を見据えて行動されている信念と覚悟を強く感じました。伝統を大切にしながらも新しい価値を生み出す、とても難しいことに臆せず挑戦する姿勢は、いずれ業界全体を牽引されるのではないかと感じました。日本の菓子業界、関西から一緒に盛り上げていきましょう!

 全国菓子工業組合連合会青年部部長・竹本洋平