各地の菓子店探訪
富山県菓子店の投稿

大野菓子店

富山オリジナルの食材にこだわって

おいもなか 富山といえば「越中富山の売薬さん」。富山市では「富山のくすり」の伝統を生かし、古くから健康面で効果があるとされる富山県産の食材を使用したからだにやさしい料理等を「富山やくぜん」に認定しています。富山県菓子工業組合の組合員の中で、3品の認定品を持つ大野菓子店さんをご紹介します。

 お店は旧北陸街道沿いにあります。昭和10年、お煎餅屋さんとして開業されました。80余年、町のお菓子屋さんとして親しまれてきましたが、冠婚葬祭中心の商品に3代目の等さんは何か大野菓子店独自の製品があったらなと思っていたその頃、富山県から「赤むすび」(コシヒカリを基に玄米食を赤くした品種)を使った試作要請がきました。小麦粉を一切使わず「赤むすび」を生地とクリームに使用して生み出された「とやま赤米シュークリーム」は平成22年「とやまスイーツ」に認定、平成24年「富山やくぜん」に認定され、富山生まれのオリジナルスイーツとして県内外に発信されました。

富山高専射水キャンパスの学生 面白い商品を作ってくれるお菓子屋さん、ということで富山高専射水キャンパスの学生グループが、富山商工会議所青年部の若手後継者育成事業「学店」に出店したいと企画書を持ってきて「商品ができたら連絡ください」と。「そんなんじゃ自分たちが作ったことにならないだろう」と大野さんは学生たちを巻き込んで活動を開始しました。富山産の米粉、芋は「ムラサキイモ」、最中の皮にスイートポテトという商品で、商品名は「おいもなか」。原材料を知ることからと、大野さんは学生たちを畑に連れ出し、お芋掘り。自分たちが掘ってきた愛おしいお芋、俄然気合が入ります。試作を重ね、パッケージのデザインも学生。当然プレゼンテーション、販売にも力が入りましたが惜しくも売上2位。もっと「おいもなか」を世の中に出してあげようと大野さん、富山県食品産業協会の地域食品評価会に出品したところ、最優秀賞の受賞。さらに平成23年には優良ふるさと食品中央コンクールで(一財)食品産業センター会長賞の受賞。平成24年「富山やくぜん」に認定されました。

 その後も大野さんの新商品開発は続き、平成25年北陸新幹線開業を機に富山の地域資源を活かした富山らしいお土産「食やくスイーツ」で「紫甘丹(しかんたん)」(エゴマと大野さんが栽培した、ムラサキイモを使ったタルト風菓子)。平成26年米粉100%とエゴマを使った「富山米やくぜんシューラスクえごま」は「富山やくぜん」に認定されました。

 現在、大野さんが使うムラサキマサリ(ムラサキイモ)は元筑波大学教授の高柳謙治氏から分けて頂いた種芋を自家栽培、無農薬(ご本人は手入れをしていないだけと笑っていらっしゃいましたが)、お子さんと一緒にお芋掘りをなさっているそうです。気さくにお話をしてくださった大野さん。材料にはとことんこだわりたい熱い思いが伝わってきました。これからも目が離せないお菓子屋さんです。

 富山県菓子工業組合事務局・西尾麻里