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T五~260年の伝統技法を

次世代につなぐ~

T五 2013年 観光庁主催「世界にも通用する究極のお土産」の9品ひとつに選定。2015年経済産業省「The Wonder 500」、2016年「OMOTENASHI Selection 金賞」に選定。弊店の「T五(ティーゴ)」が発売され3年経ち、現在色々なところで評価を頂けるようになりました。

 T五のもとになった銘菓「薄氷」は、宝暦2年(1752年)に幣家五代目・五郎丸屋八左衛門によって創り出されました。以来、その秘法を伝え、藩政時代には禁裏や加賀藩主前田公より幕府に献上。また明治以降宮内省の御用を始め、茶道界などから過分の推賞を得て参りました。雪の深い北陸の石動。雪が消えかかる如月、弥生の寒い朝は、水溜まりや水田に薄氷が一面に張ります。その美しい姿をお菓子に映しました。熟練された職人の手によって一枚一枚丁寧に手仕事によって作り出される薄氷は、富山特産の新大正米を使用した薄い煎餅に、阿波特産の和三盆糖を独特の製法で刷毛塗りしております。美の巨人・柳宗悦も愛したその抽象美と、口の中に入れるとふわりと溶ける和三盆の上品な甘さで愛されています。

薄氷 260年余り代々受け継がれてきた「薄氷」の伝統技法をもとに、現代の新しい感性を取り入れ、次の世代に、そして末長く愛されるお菓子になってほしい。そんな想いから、T五は生まれました。味覚の基本である塩味・苦味・酸味・甘味・滋味を、日本らしい味わいの桜・抹茶・柚子・和三盆・胡麻の五つの風味に重ねました。またそれぞれは、日本の四季を表しています。桜は薄紅色で春、抹茶は深い緑で夏、柚子は鮮やかな黄色で秋、和三盆は雪をイメージする白で冬、胡麻は季節の合間である土用を表す「玄」と呼ばれる黒色。国産の天然素材にこだわり、代々受け継がれてきた薄氷と同じ製法で仕上げています。口の中に入れると、薄氷のように儚く口の中で溶けていきます。パッケージの五色の紙を開いていくと、真綿に包まれた一枚ずつ綺麗に並んだ優しい色合いのT五があらわれます。

 T五のネーミングには表の意味と裏の意味があり、ここでは本当の裏の意味を。デイヴ・ブルーベックの代表ナンバー「Take Five」から来ています。この曲は1950年代に発表され、4拍子が基本のジャズの中、初めて作られた5拍子の曲で変拍子と言われました。しかし、この曲は代表的なジャズナンバーとして今でも世代を超えて愛され続けています。そんな和菓子になればという想いから、アルファベットの「T」と漢数字の「五」を組み合わせて「T五」と名付けました。

 私は新しい商品を開発するとき、自分が歩んできた過去を大切にします。修業時代に教わってきたこと、自分の趣味、経験してきた色々な事、何故か頭に引っかかっている言葉、その中にヒントが隠されていて、それをどうつなぎ合わせていくか。T五も今までの記憶や思い出の集大成と思っています。今後も次世代に残せる和菓子をひとつでも創れるよう精進してまいります。

 富山県菓子工業組合理事・㈱五郎丸屋・代表取締役・渡邉克明

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