各地の菓子店探訪
長崎県菓子店の投稿

長崎で知る人ぞ知る栗王子の栗饅頭

~去年10月28日リニューアルオープン~

季節の栗王子 長崎奉行所の跡地にメイン通りの中心にある栗饅頭屋の田中旭榮堂。
 鎖国時代の日本で唯一異国文化が交錯した長崎の町で明治38年の創業以来118年、4代に渡り栗饅頭を作り続けて参りました。初代素郎市さんは栗饅頭の他にカステラなど他のお菓子にも力をいれておりましたが、3代目のときに栗饅頭1本にしぼり、現在は栗饅頭が名物のお店として長崎菓業青年会で活動されている田中耕太郎さんが4代目を継いでおられます。

「栗饅頭」とマスコットキャラの栗王子 店を訪れてまず目についたのは南蛮人が栗饅頭を抱きかかえたとてもインパクトのあるキャラクターの看板です。耕太郎さんのお話しでは「大正時代からの当店マスコットキャラクターで、いつの頃からか地元の方々に栗王子と呼ばれるようになり、その強烈なデザインのせいか日本全国から栗王子の写真を撮りに来られるファンもおられます。なぜ和菓子の栗饅頭を西洋人が抱きかかえているのかというと、蒸し饅頭が主流であった時代にオーブンを使用して饅頭を焼き、材料にも明治期まで日本であまり食す習慣がなかった鶏卵をふんだんに使用するなど、西洋の製菓技法を取り入れ作られた栗饅頭は、発売当初にはまさに文明開化の味がするハイカラなお饅頭として大変評判を呼んだというふうに伝え聞いております。当店名物の栗饅頭を開発した初代素郎市も栗王子のキャラクターを使い、栗饅頭を和洋折衷のお菓子として宣伝していたのだと思い馳せている次第です」ということでした。

 昨年からこの栗王子を冠したきな粉仕立てや黒ゴマ仕立てなど様々な味覚の栗饅頭や、耕太郎さんが趣味で収集している幸せの四つ葉のクローバーの押し葉カードがおまけについている四つ葉の形をした栗饅頭などが販売されており、若い層や男性層など新たな顧客の掘り起こしにつながっているということです。

栗饅頭田中旭栄堂 代々受け継いできた名物の栗饅頭も40グラムのサイズから大きいのは10㎏を超えるものまで、また栗型だけでなく鯉や桃、桜、ハートなど様々な形があり、しかも文字入れも出来るという栗饅頭に特化した専門店として地元で親しまれている。

 今後も栗饅頭のブランドをより太くするために、新開発に余念がない。守るものは守りながら色々変化させていきたいとの事で、これからも栗饅頭1本で大きく成長し、しっかりと伝承していくことでしょう。

 全菓連青年部九州ブロック長・松下利文