若い後継者は菓業に自信と自覚を持て
愛媛県では今年、愛媛国体が開催されるにあたり、松山空港からの道路整備が急ピッチで行われています。それに伴い国体の後、道後温泉のシンボルである道後温泉本館の耐震化を含めた大掛かりな補修工事が行われることになっています。
千と千尋の神隠しの舞台のモデルにもなったとも言われ、国の重要文化財にも指定されている情緒ある道後温泉本館は、明治27年に建てられた、味わい深い建造物です。
実はこの本館の1階部分は、明治27年当時は庇(ひさし)が現在の銅板ではなく、ヒノキの皮を重ねた檜皮葺(ひわだぶき)と呼ばれるもので出来ており、その工事を担当したのが左官の棟梁で、檜皮葺職人でもあった私の曽祖父である白石貞吉でした。
また、私の母方の祖父は、磯草塗(いそくさぬり)と呼ばれる漆塗りの職人で、鳥取県でも有名な名工だったと聞いております。
私事ですが、若い頃は菓子屋を継ぐ気などまったくなかったのですが、何か大きな力に引かれるように、家業を継ぐようになりました。考えれば、父方も母方も職人の家系で、私にもいわゆる職人さんの血が流れていたのかも知れません。
話は変わりますが、最近精神医学の分野で退行催眠の技術が注目を集めています。心にトラウマ(精神的な心の傷)を持つ人に催眠をかけ、子供の頃の記憶を思い出させているうちに、次々と前世の記憶やその人生で死んだあとのあの世の記憶を思い出すひとが出てきたというのです。日本でも江戸時代末期に実在した、自分の前世をはっきりと記憶していた勝五郎という少年の話は有名です。
国学者平田篤胤の時代で、篤胤は勝五郎を自分の書生として自宅に住まわせ、勝五郎再生記聞という書物を後世に残しています。
退行催眠によって前世やあの世の記憶を思い出した人の話を読むと、我々は次にどういう人生を送るかをある程度計画をして、それにあった父母を自分でえらぶのだそうです。
話がそれましたが、今、菓子業界も後継者不足で組合員がどんどん減少していますが、後を継いでいる若い方には、自分が家業を継ぐべくその家に生まれてきたのだという自信と自覚を持って頑張って欲しいと思っています。
白石本舗四代目店主・白石恵一