うどん県それだけじゃない香川県
あん餅雑煮のお話
変わった雑煮として「あん餅雑煮」は、ここ数年メディアにも取りあげられる事も増えてきました。香川の雑煮はイリコの効いた白みそ味で、大根・金時人参とあん餅が入った香川県の郷土料理の一つです。県外の方から「あん餅を煮込んだら溶けて無くなったのですが…」と、たまに問い合わせがあります。砂糖を沢山使ったお餅や、大福であん餅雑煮を作ろうと思ったのでしょうね。あん餅自体が香川の食文化なんです。香川県では、あんこを餅つきで搗くおもちで包んだものをあん餅と呼びます。
あん餅雑煮の歴史は江戸時代頃からと伝えられています。讃岐三白と名高い砂糖は当時高級品でした。お正月くらいは贅沢したいとの思いで、あんこを餅で包んで雑煮に入れたのが由来とされています。砂糖は本来なら藩に収めなければならない物なので、見つかれば処罰されてしまいます。あん餅雑煮の噂を聞きつけた役人が家を周り「雑煮の餅に砂糖をつかっていないか?雑煮を検めさせてもらう」というような取締りがあったようです。庶民は、この雑煮検め(ぞうにあらため)を恐れ、役人の舌を誤魔化す為に、塩餡餅(砂糖の代わりに塩で作ったおもち)入りの雑煮を用意しておき「お役人様の雑煮はこちらにご用意させて頂きました。どうぞお検めください。」…と、雑煮検めをやり過ごしていたそうです。塩餡餅も香川の餅文化として残っています。
餅屋のお話
エビスヤ本店創業は明治43年です。創業当初は「出搗き」といって、餅つきに必要な設備を大八車に積み込み、各家のもち米を蒸して搗いてまわるスタイルでした。戦前に店舗を構え、お客様が持ってきたもち米を加工する「賃搗き」のスタイルを経て現在に至ります。お店では、餅本来の旨味が強い佐賀県産の「ひよくもち」を使い、当日製造、当日販売にこだわって餅・赤飯・餅生菓子を販売しております。店の横に併設している茶店では、県の特産品でもある金時人参が出回っている時期のみ、冬季限定メニューとしてあん餅雑煮を提供しています。「うどん県…それだけじゃない香川県」のキャッチコピーをテーマで、香川の食文化を紹介させていただきました。
香川県菓子工業組合青年部会長・田村正太郎