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新緑の名園 一期一会の味

栄西禅師の大茶会開かれる

 平成30年4月22日臨済宗の改組で、中国・宋から抹茶の喫茶法を伝えた栄西(岡山市出身)をしのぶ「第73回栄西禅師賛仰献茶式・大茶会」が開かれました。表千家、裏千家、武者小路千家の三千家流と岡山にゆかりのある藪内流、速水流の五流派が、持ち回りで献茶。流派を超えた全国でも珍しい形式を採り「栄西茶会」の名で広く親しまれています。

 この度、主催者である山陽新聞社様より「どのようにしてこの茶会に出される菓子が選び決められるのか」という取材を受けたので、この茶会とのかかわり、菓子が決められる過程をお話したいと思います。

 我が店も父の代から毎年のように各流派から注文を受け菓子を作らせて頂いておりますが、古い資料では昭和25年に「面影」という菓銘で裏千家に出されたことが山陽新聞に残っています。以後「新緑」「薫風」「背ぶり山」などの銘を付け、毎年形の違う菓子を考え作り続けています。

 それではどのようにしてこの菓子が決まるのかということですが、席主はこの茶会で最高のおもてなしをするためにテーマを決め、こだわりの道具をそろえ、皆様に喜んでもらえる菓子を選びます。

 今年淡交会青年部様が選んだ様子を紹介します。

 4月10日夜、同青年部の男女8人が集まり、菓子会議を開いた。当店から提案した三点の菓子を試食しながら「(ようじで)切ると現れるあんの色が鮮やか」「もちもちした皮は食べにくいかも」「笠の表現が直球すぎるのでは」…次々に意見がでる。

 銘は「八十八夜」。春から夏に移る節目を表し「夏も近づく八十八夜…」の唱歌「茶摘み」でもよく知られる。注文を受けた当店は、1ヶ月ほど試作を重ね、唱歌の歌詞から「すげ笠」と「若葉」、初夏の後楽園を白く彩る「ウツギの花」からイメージを広げて三点を提案しました。選ばれたのは、緑色のあんが、乳白色のういろうからほんのり透ける半月形の菓子。8人は抽象的な形がより想像力をかきたてる」との評価で一致しました。

 和菓子は「五感の芸術」ともいわれ、目に映る美しさや口に含んだ時のおいしさ、ほのかな香り、指で触れたり、ようじで切ったときの感覚も大切にされます。銘の響きから、情景や背景に思いをめぐらせるような創造性や意外性ももとめられます。栄西茶会でも毎年、各流派それぞれのもてなしの心に応え、岡山県内の和菓子職人たちが技を競ってきました。新緑の名園、銘茶とともに「一期一会の味」を楽しんでいただきたいと思います。

 岡山県菓子工業組合理事長・宮武孝昭

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