和菓子処 玉喜屋
温故知新ハイブリットで切り込む柔軟な姿勢
信州上田は三年前の大河ドラマの舞台となった真田幸村の里です。それ以来多くの観光客の方々が訪れる街となりました。
当店は明治二年の創業で現在は五代目。上田では最も古い菓子店ですが、家族経営の小さな店舗です。
信州という恵まれた大地と、歴史風土に育まれた上田の地で、素材選びから配合・製法・包装まで、妥協をせずに気持ちの伝わるお菓子を作っております。
さて、昨今の消費動向は様々ですが、上田市のような田舎の地方都市でも核家族化は進んでおり、客単価が大幅に減っています。また、観光客の方々が増えたとは言え、そもそも観光資源に乏しい場所ですので、その数も徐々に減ってきている事は否めません。
このような現状を踏まえて取り組んでいることの一つは、【地域の売りを再発見】する事です。例えば信州と言えば蕎麦と味噌が挙げられます。当たり前すぎて地元では飽き感のある素材ですが、生産農家・製粉業者や醸造元・製品化する自店舗といった農・工・商の其々をブラッシュアップすることで付加価値を付けることが可能です。心掛けたのは、観光客相手の商品ではなく、地元のお客様に喜んでもらえる地産ブランド造りです。
当店製品では、【蕎麦味噌饅頭】や【味噌パン】等がありますが、ベースとなる全ての素材と人材を信州上田産で統一し、パッケージにも出来る限り表記して、各々の個性を生かせるように製品化していきました。
最初は地味で売れ行きも低迷していましたが、地域イベント等に少しずつ持って行ったりしながら我慢して作り続けました。その結果、次第にメディアに取り上げられるようになり、賞等も頂き、最終的には御用菓子としてお使い頂けるところまで達しました。今では当店を代表する銘菓の一つとなっています。
もう一つの取り組みは、【低糖質】と【グルテンフリー】への対応です。当店でもお客様からの依頼が非常に増えてきております。
以前も依頼で作る事はありましたが、現在は購入時の選択肢として一般的になりつつあります。
既に大手企業も大々的に参入していますし、素材も手に入りやすくなっています。顧客の新規開拓にも期待感があります。
老舗として守るべき伝統の商品と、現代の顧客ニーズに応えられる革新的な商品。取捨択一ではなく、どちらも対応できるハイブリットな商品開発を、小規模店舗ならではの小回りで柔軟に対応していこうと考えています。
長野県菓子工業組合青年部・小林亮