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落語「鰍沢」の舞台を巡る旅

富士川落語まちプロジェクト

 「南無・・お材木(お題目)で助かった」

 伝説の落語家三遊亭圓朝がつくった演目「鰍沢」のオチ。

ツアー店風景(右から三三師匠、筆者、お客さん) 笑わせる噺というより、ミステリアスな人情噺の大作である。江戸落語では珍しい地方都市名がそのまま落語の「演目」になっている。この落語「鰍沢」の舞台となる富士川町は、平成22年、鰍沢町と増穂町が合併して誕生した。甲府盆地の南西部に位置し、町内を日本三大急流の一つ富士川が流れ、江戸時代より甲斐国と駿河国を結ぶ富士川舟運の要所であり、物流・文化交流の拠点(河岸)として栄えてきた。人口は現在約16,000人。近年は高齢化と人口減少が課題となっている。また、基盤となる産業がないためバイパスや高速道路の開通でストロー化現象が起きつつある。鰍沢商店街も客離れに歯止めがきかないでいた。そんな折、落語をこよなく愛する地元商工会指導員の長年あたためてきたという妙案に、「そりゃおもしろい!」と相乗った。

 ~落語家と落語「鰍沢」の舞台を巡る旅~着地型ツアーを開催して首都圏から落語愛好家(新規客開拓)を呼ぼうというものである。六代目円生が噺のまくらで「身延参詣には順番があって、青柳の昌福寺、妙法寺、法論石と巡り、一度、鰍沢に下りてから船で身延山に向かう」と話しているのをヒントに、落語家がガイド役として観客と一緒に噺の名所を巡り作品の世界観を追体験しながら実際に落語を鑑賞する観光体験型プログラムを開発する。というものである。

冨士川落語せんべい 実は平成14年から商店会(元気会)で落語鰍沢寄席を毎年開催、人気落語家(立川志の輔、三遊亭好楽、春風亭昇太、立川談春、柳家喬太郎、林家たい平、・・等層々たる師匠方)が鰍沢を訪れた。落語家と巡るツアーは、寄席の進化形、新しい挑戦である。㈶日本落語協会のバックアップ、町のふるさと名物応援宣言、町振興課、落語愛好三三会、商店会、商工会他、総勢24名の地域一丸、「落語鰍沢の舞台~富士川落語まち実行委員会」を結成。地元旅行会社の委員を中心にツアー準備を進めた。私も事業ロゴ、街灯ボード、法被、のぼり等PRツール一連を手掛けさせてもらった。

 平成27年の第1回は、「柳家三三師匠とめぐる落語鰍沢ツアー」。募集3日で完売となるほど落語愛好家の間でも話題となった。当日、午前中名所を堪能した後、昼食は鰻屋が開発した絶品「落語弁当」、試飲に酒屋が開発した極日本酒「鰍沢」。薬屋が「熊の膏薬」を限定販売。その後、ツアーコースは、弊社竹林堂。大型バスのお客さんが一斉に。柳家三三師匠がアドリブで、竹林堂店員になりきり「わたしは塩饅頭がこわい!」直に薦めてくださるものだから売れに売れる。また、ツアーに向けて開発した2種の新作菓子~「寄席の中でも音をたてずに召し上がれる」をコンセプトにしたやわらかサブレ「落語せんべい」。演目「鰍沢」に登場する「毒消しの護符」にあやかりごまを使った「毒消しの護符あめ」。どちらも予想以上に受けた。ツアー大詰め三三師匠の落語「鰍沢」は圧巻、お客さんも大満足の表情で、ツアーは大成功に終わった。後のアンケートでもスタッフ一同の「おもてなしゴコロ」はお客さんに伝わっていた。平成28年は、春風亭一之輔師匠、平成29年は入船亭扇辰師匠を招聘して同様にツアーを開催した。現在は、さらなる挑戦、来年の富士川町10周年記念・人と笑いと福を呼ぶ「富士川大落語まつり」に向けて、着々と準備を進めている。・・・菓子も深いが、落語も深い。

 山梨県菓子工業組合青年部㈲竹林堂 専務取締役・志村光彦

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