各地の菓子店探訪
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御菓子処 芳光

ひとつひとつ手作りのわらび餅

二代目 島岡樒雄氏 茶人から絶大な信頼を得ている御菓子処「芳光」。店内には常時、季節の上生菓子8種類程、また風情豊かな干菓子類が並ぶ。中でも代表商品の「わらび餅」は、名古屋のみならず、全国的に人気の商品である。ひとたび百貨店に出品すれば即完売で、東京では行列ができるほどだという。

 今回は「芳光」の二代目、島岡樒雄氏にお話を伺いました。

わらび餅 「芳光」は初代、故・島岡孝光氏が昭和29年、京都の老舗「塩芳軒」にて約10年間、京菓子を学び、その後名古屋の名店「川口屋」に入られ、昭和40年、名古屋市中区新栄に「芳光」を創業。代表銘菓「わらび餅」を考案し全国的に知られる有名店に。平成15年、名古屋市東区徳川園付近へ移転し、現在に至る。

 きな粉のかかった「わらび餅」はひとつひとつ手作りである。とても柔らかく、黒文字を入れると、中に漉し餡が包まれている。口に入れると絶妙なバランスで餅と餡が溶けていく。夏のイメージが強いわらび粉だが、芳光では暑さで品質が落ちることから、夏場を除いた10月〜6月の期間限定で販売する。

 わらび餅が現在の形になったのは、お店を創業して10年ほどもたってからの事だという。

 わらび粉は九州産。柔らかさのなかにもコシのあるものを選び、丹念に練り上げて粘りを出していく。創業当時は餡玉を手で丸めて、わらび餅で包んでいたが、口当たりを追求し、だんだんと餡が柔らかくなっていったのだそう。そして最終的には、竹べらで餡をすくうようになり、現在の形になっていったのだという。芳光の上生菓子はどれも柔らかく、わらび餅以外の菓子も、どれも負けず劣らずの絶品だ。

 現在、初代の代わりに芳光の味を守っているのが二代目、島岡樒雄氏だ。樒雄氏は岐阜の和菓子の老舗「虎屋本店」の次男。三重の老舗「花乃舎」にて修業され、平成10年芳光に入る。テレビチャンピオン準優勝や、選・和菓子職の認定など数々の受賞歴をもつ実力派の職人だ。

 普段、菓子づくりについて心掛けている事を伺いました。「和菓子は繊細です。季節によって気温や湿度など微妙な変化を受けるので、常に安定したものをつくっていく事を心掛けています」

 その口ぶりからは真面目で誠実な職人気質を感じられました。

 最後に、芳光の二代目として、これからの抱負を伺いました。

 「守らなければいけない事はしっかり守って、軸はぶらさず時代にあった菓子を作っていきたい。『一生一品』という言葉があります。初代は、私達にわらび餅を残してくれました。私も将来わらび餅に次ぐ一品を作りたいですね。そして、初代が、三世代続いて老舗の仲間入りだと言っていたので、しっかり暖簾を受け継いで、息子にバトンを繋げていきたいですね」

 今後もさらなるご活躍を期待したい。

 愛知県菓子工業組合・柘植千晴

店舗データ

御菓子所 芳光御菓子所 芳光
名古屋市東区新出来1-9-1
T E L‥052-931-4432
定 休 日‥日曜日
営業時間‥9時〜18時

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