与古為新の心で
伝統を尊びつつも新しい挑戦を
世界文化遺産の仲間入りを果たした「明治日本の産業革命遺産」のひとつで、鹿児島きっての観光名所でもある「仙巌園」内にある鶴嶺神社において、過日十六回目の「かるかん奉納祭」が執り行われました。
御祭神の御前に、お菓子を載せた三方を並べた祭壇を設け、粛々と神事が執り行われ、比良田輝明理事長が祭文を奏上、出席者全員による玉串奉奠等、無事終了すると、毎回心が引き締まる思いがします。
鹿児島における「かるかん」の最も古い記録は、一六九九年に島津家第二十代当主で第三代薩摩藩主島津綱貴公の五十歳の祝宴に出されたとあります。
また、島津斉彬公の行った集成館事業の一環で、砂糖の製法改良も行われ、現在の「かるかん」へと更に発展したという経緯もあり、島津家由来の神社で行われるのです。
鹿児島の菓子文化にとって、「かるかん」は、やはり特別なお菓子で、未来へとつないでいく大切な財産です。
また一方で、新しい知識を得、個々人の技術を高める機会として、毎年菓子技術講習会を実施しています。
第三十七回目となる令和元年度は、「喋れる和菓子職人」として、全国各地の講習会で講師をしていらっしゃる、千葉県の「菓子工房福一」取締役社長の池田尚史氏にお越しいただき、「即戦力になる店売品」として、「冷凍可能無添加大福」「米粉の洋風マドレーヌ」「純栗あん上生風羊羹」「あんぱん饅頭」「抹茶ねりきり」「ココナッツ餅」「米麹まんじゅう」の七種類のお菓子の作り方を教えていただきました。
池田先生と同じお店で修行したという縁のある此元一晶氏(湯気院)と組合理事の小城吉輝氏(小城製粉)が助手として手伝うなか、巧みな手際のよい動きと軽妙な語り口で、参加した四十七人の参加者も楽しみながら学んでいました。
普段地元では使わないような新素材の紹介もあり、各店なりに工夫して、今後の菓子作りに活かされていくのだろうと感じました。
これからも、伝統にも革新にも敬意を払い、組合員のための活動に取り組んでいきたいと思います。
鹿児島県菓子工業組合事務局長・惠島理子