地元の豆文化を継承し守り続ける組合企業
福島県中通りの北部に位置する人口約6万人の二本松市は「智恵子抄」に詠われた安達太良山と阿武隈川で知られ、霞が城の城下町として栄えかねてより菊の町として菊人形や、一本の茎から数百、数千の菊花を咲かせる「千輪咲」などの高い技術による「魅せる」花づくりが行われてきました。また今から約370年前(1643年〈寛永20年〉)丹羽光重公が二本松城主として入部、「よい政治を行うためには、領民にまず敬神の意を昂揚させること」と考え、寛文元(1661年)現在の栗ヶ柵に二本松神社をまつり、寛文4年(1664年)領民なら誰でも自由に参拝できるようにしたのが「提灯まつり」の始まりといわれており二本松の提灯祭りは日本三大提灯祭りのひとつとして数えられております。二本松では良質の米と安達太良山の伏流水を使った酒造業が栄え、現在も市内に4軒の蔵元があり、それぞれに特徴のあるおいしい日本酒を造っています。
二本松藩主丹羽氏は現存していませんが玉屋の五代目安斎茂兵衛に「江戸の城下で新しき菓子を学んでまいれ」との藩命を受け江戸に行き、「塩釜」と「練り羊羹」の製菓法を習得して帰郷しその秘法を二本松に広めることになりました。現在も人口にくらべ菓子店の数が非常に多く江戸時代からの菓子文化が継承されている地域の一つです。
ここ二本松市の中心部に創業明治10年、豆・菓子工房いのうえ【有限会社井上商店】があります。組合員なので菓子製造も行っていますが、きな粉・上新粉・豆菓子等の製造、販売も行っています。原材料の大豆・小豆は福島県、近隣の県より秋口に翌年使用する一年分を買い付け、営業低温倉庫に保管し、安定供給できる体制をとっており、特にきな粉、豆菓子の製造法は昔より一貫し直火焙煎により、大豆の風味を損なうことなく手間を惜しまず製造された、青肌きな粉、黄大豆きな粉、黒大豆きな粉、牛乳で飲むきな粉などの商品が全国に出荷されています。製粉は上新粉・だんご粉・こうせん・もち粉など行っており県内はもとより多くの組合員に納品されています。穀物の賃加工も行っており、
豆菓子:白・青・黒大豆・2升から
ポン菓子:白米・大豆(黒豆)・とうもろこし・玄米・1升から
押豆:大豆1㎏から
製粉:小麦粉(10㎏から)・米の粉(1㎏から)・玄米焙煎(1・5㎏から)・はと麦煎り(3㎏から)・きな粉(5㎏から)
惣菜用大豆として:ひたし豆・押豆・黒豆など
など、普段あまり目にすることのない業務を知ることができました。
地元の食文化に欠かせない豆文化を継承している現在は数少なくなった会社の一つです。
今回の取材を通し和菓子の主要原料材料の一つである、きな粉をはじめとする日本の豆文化に関心を持つ貴重な機会となりました。
代表の安達氏は大豆製品を通して、消費者の方々へ「安全・安心・美味しく・健康」をモットーに大豆生産者の顔の見える穀物加工品をお届けできるよう日々努力している会社です。安心してお買い求め下さいとのことでした。
福島県菓子工業組合副理事長・菅野嘉春