コロナ禍における和菓子②
発想を転換した新しい考え
2月にコロナ禍における影響と今後の課題について組合員の方々にお話しを伺いました。前回(3月号)に引き続き長年和菓子製造に携わって来られた方々にコロナ禍を乗り切るお話を中心にお聞きしました。
創業当初から商店街で営業を続けてまいりましたが、商店街の大規模改修工事が始まり、振動や砂ぼこりの影響がひどく衛生、営業上のことが懸念され昨年の夏前に近隣の道路幅員の広いに幹線沿いに思い切って移転しました。
移転当初お客様に来ていただけるかどうか不安もありましたが、商店街の中の密を避けたお客様や商店街の中では走行できない自転車のお客様もお越し頂けました。また、数年前に新駅ができたので、人の流れも増え、客単価も増加に推移し良い結果をもたらしました。
販売員から既存商品の形や色など少しだけでも違う商品が欲しいとの要望がありました。大きな変更は、お客様も販売する側も引いてしまいますが、少しだけの違いなら売る側も新鮮だし、お客様との会話のきっかけにもなります。
また、販売員の意見を直接職人に伝える事により、今までの固定観念を超えた新しい発想が生まれ、販売員も自分の意見が取り入れられた商品を積極的に販売する意欲が芽生えると言う良い循環ができました。
これからの課題は、節分の餅まき、お茶席など季節に準じた催事等は極端に減少傾向ですが、朝生菓子、誕生餅の家庭的な注文は戻りつつあります。そのような個人個人が喜んでもらえる需要を大切にしたいです。
また、今までの習慣、慣習を大切にしながら発想を転換した新しい考えを取り入れていかなくては、と実感した事例でした。
―インタビュー後記―
一年前、来年の端午の節句は、通常の社会に戻っていると信じていましたが、この原稿を執筆している5月初旬、3度目の緊急事態宣言の真っただ中です。
このコロナ禍で、先の見えない不安で不透明なご時世になりました。
祈るは、COVID―19ワクチン予防接種の広まりが一条の光となり普通の日常が到来すること、そして次に来るかもしれないパンデミックに備え今、起こっている事柄を教訓にして前向きに進んでいきたいものです。
そして今、恐怖に煽られた心を癒し、人間が人間らしく普通に生活できるために寄り添える甘美な慈しみの心の詰まった和菓子を作り続けられます様に研鑽を積まなければと思います。
兵庫県菓子工業組合 副理事長・岩崎典治/事務局・奥山優子