DDC(ドリームだんごコンテスト)
夢の団子で地域を盛り上げる
石川県菓子工業組合青年部(33名)では、コロナ禍により直接会えない中でも部員間の交流を続けていける様、早い時期よりZOOMを活用したオンライン環境を構築した。また、各種イベントの中止が相次ぐ中、何か社会に対し出来る事は無いかと部員達が考え実施するのが〝医療従事者支援の為の菓子の寄贈〟だ。今年度も昨年に引き続き、医療従事者へ感謝の意味を込めて有志を募り、病院への寄贈を10月末に行った。
未だ終息の兆しが見えないコロナ禍において、知恵を絞り明るい話題を提供している部員達がいる。その中で今回は御菓子司八野田が行ったDDC(ドリームだんごコンテスト)という取り組みを紹介する。
有限会社八野田(代表取締役・八野田聡(47歳)役員4名、従業員2名)、昭和20年創業。UFOの町として知られ、ローマ法王へ献上した神子原米で有名な石川県羽咋市に2店舗を構える。先代が考案した代表銘菓「余喜しぐれ」は、チョコレートとピーナッツ生地で黄身餡を包餡し、砂糖をまぶし胡桃を載せて焼成した焼き菓子だ。第19回全国菓子大博覧会名誉金賞受賞。年間3万個を売り上げる人気商品だという。
創業当初は和菓子店であったが、先代が全日食チェーンのスーパーへと業態転換をした。大学卒業後、有名和菓子店で修行し実家に戻った当時、3代目の聡氏は和菓子製造とスーパー経営の両方を続けている事に思い悩んでいた。近隣での大型SCの出店により品揃えや価格競争の波に巻き込まれ、小売業に対する先行きの不透明感を感じていたからだ。聡氏は熟考を重ね、スーパーを閉め和菓子製造の道一本に絞り、再度事業転換する事に決めたのだという。それは和菓子製造業がお客様に喜ばれる商品を、一から考えて作る商売であると気づいたからである。
その後経営は軌道に乗っていたが、突如コロナ禍が襲った。またしても先行きが見えなくなった聡氏であったが、ここで改めて自分自身の価値観を見直したいと、コーチングを受ける事にしたという。その中で生まれたアイデアがDDCである。従業員との面談の中で生まれイメージを共有し、スタッフ全員で作った企画だという。
お客様が考えた夢の団子を募集した。この企画は地元小中学校の夏季休暇の課題にも採用され、幅広い層から130件の応募があった。上位6品をコンテスト形式で300人が試食投票した。グランプリは『悪魔の団子』。聡氏はこう語る「このイベントを通して顧客が求めている商品のイメージが掴め、マーケティングが出来たと思います。そして、応募されたお客さんや子供達が、親や学校を巻き込み地域全体が盛り上がりました。試食出しは大変でしたがお客さんとの繋がりが深まったと思います。お菓子屋の特別な役割がある事に気がつきました」。
石川県菓子工業組合青年部部長・松田健太