LE MONDE(ルモンド)
長門のふるさとを発信する使命とともに
日本海に面した海を望む自然景観を持ち、歴史ある湯本温泉を持つ山口県長門市。蒲鉾やちりめん、干物などの海産物も有名な町です。このほど山口県を訪れた将棋の藤井聡太氏がお菓子を食べたことで一躍知名度が上がった柑橘類「長門ゆずきち」の最大の栽培地でもあります。
今回ご紹介するのは、市内のショッピングセンターに店舗を構えて31年、地域に愛される洋菓子店のオーナー小泉成弘氏63歳。地元仙崎で100年以上続く和菓子店小泉屋の5代目は地元ショッピングセンターの立上げに伴い、地元の店27店舗で設立されたテナント会の一員として「ルモンド」を開業しました。
東京製菓学校を卒業後、東京のスイング洋菓子店(現在閉店)で修業されたのち、和菓子店から洋菓子店へ時代を見越した決断です。店内は裏の厨房で作りたてのフレッシュなケーキや焼菓子がたくさん並び、選ぶ楽しさがあります。また見渡すと季節感あふれるディスプレイがあり、買い物のお客様に足を止めてもらうための非日常な演出をていねいに行っています。
長門と言えば金子みすゞのふるさと(童謡詩人)。詩をイメージしたお菓子には長門ゆずきちを使用し、パッケージは地元のイラストレーター尾崎眞悟氏がデザインし、町の地図を包装に使っています。みんなちがってみんないい、8種類の味で個性を表現し、地元銘菓としてまちがいないお菓子だと言われるようになりました。地元の夏みかんの原樹を使ったものや、鯨文化を表した鯨最中なども作っています。
跡継ぎは一人娘さん26歳。現在東京麻布で修業中です。父娘にとって大切な存在であった小泉氏の奥様は50歳で病を患い短い闘病生活で早逝されましたが、父が言わなくとも娘さんは自然に菓子の道に進みました。
最後に、菓子屋の経営者にとって大切なパートナーを亡くすことはとても辛いことです。同じ経験をされながら店を守るために頑張っていらっしゃる方がいれば、心からエールを送りたいとのことです。テナント会長や支部長を長く努める小泉氏の温かい人柄を表す言葉です。
今は6代目となる娘さんがいつか帰郷したら、都会の風と味を取り入れ、一緒にブラッシュアップして働ける日を楽しみに日々を過ごしています。
山口県菓子工業組合専務理事・恒松恵子