各地の菓子店探訪
富山県菓子店の投稿

硝子作品を和菓子で再現

食べるアートピース

 北陸の冬の風情を干菓子に映した銘菓「薄氷」を江戸時代中期から作り続ける薄氷本舗五郎丸屋(富山県小矢部市)。昨年10月に創業270周年を記念し発売したのが「きせつのさがしもの」です。長く続くコロナ禍の中、アート作品のような目でも楽しんで頂けるような和菓子を作りたいという想いから生まれました。

硝子造形作家 山本真衣 × 薄氷本舗 五郎丸屋

 この和菓子は、江戸切子の技法で作られた山本真衣の硝子作品シリーズ「Breeze ブリーズ」に、五郎丸屋16代目渡邉克明が触発されたことから生まれました。作品の造形を琥珀糖で、できるだけ精密に再現。従来の琥珀糖は表面を再結晶させているが、本商品はあえて結晶化させずガラス作品のような透明感が特徴。お客様の元で時間とともに表面の再結晶化が進み、すりガラスのように白くなっていく変化も楽しんで頂く和菓子です。

 淡く繊細な色合いは様々なカクテルによって表現されており、光の屈折により見る角度によって表情がきらきらと変化します。スカイダイビング、ミッドナイトなどカクテルは色ごとに変えており、バーテンダー指導のもと作り上げました。

きせつのさがしもの(夏色)

 5年ほど前、硝子造形作家の山本さんの作品をSNSで初めて見たとき衝撃を受け、たまたま仕事で上京した際に横浜で個展を開いていた山本さんを訪ねて親交が始まりました。昨年2月に「和菓子で作品を再現したい」とお願いすると、「よくお客さんに作品が美味しそう」「和菓子みたいですね」とよく言われ「私も菓子になった作品を食べてみたかった」と快諾を得ました。それから試作を重ね出来たのが、まさに食べるアートピース「きせつのさがしもの」です。

 写真は夏季に販売している「夏色」で、季節により色合いと味わいを変えています。弊社のオンラインストアのみで販売しており、毎週金曜日に数量限定で予約販売していますが、発売以来数分で売り切れる日が続いています。

 硝子造形作家、バーテンダー、和菓子職人、それぞれの得意分野で作り出した新たな和菓子をより多くの方に喜んで頂けたら幸いです。

〇山本真衣
 1985年東京生まれ。英国の大学で硝子を学び、東京藝術大学大学院へ。2010年の修了制作として『Breeze』が生まれる。神奈川県三浦市の潮工房にて2年間弟子入り、2012年に独立。

 富山県菓子工業組合理事長・渡邉克明