各地の菓子店探訪
群馬県菓子店の投稿

伊香保銘菓 寿屋

とことん手作りにこだわって

(左から)湯の花饅頭、すずとら、黒蜜水羊羹

 古くは万葉集に登場し、明治大正時代には多くの文豪が訪れた歴史ある伊香保温泉。温泉饅頭発祥の地であり、老舗と呼んでもよい魅力的な店が多くございます。伊香保のシンボルである石段街。その上段に温泉饅頭の考案店「勝月堂」さんがあります。石段街の名所として連日、大盛況。お客様に100年以上変わらない味を提供しています。この石段街から脇道を通るとかつての花街三丁目へ。三丁目には何軒ものお饅頭屋さんがありましたが現在は「大黒屋」さんだけ。あんこからすべて手作り。売り切れ仕舞いのお店として伊香保通のお客様に特に人気です。この三丁目から昭和40年台に車社会を見越して温泉街入り口に出店したのが「清芳亭」さん。機械化も早く、売上は県内一。全国に名を轟かせています。ここで我が店「寿屋」の紹介をさせて頂きます。

 当店は昭和38年創業。今年で61年目を迎えます。石段街から徒歩7分の見晴台という地に創業以来店を構えています。9年前までは水沢街道沿いに大きな工場を併設した店舗もありましたが売却。経営の効率化と商品の品質向上を目指してでの事です。現在は家族経営の小さなお店で二代目の私(経営者本人)が製造を担当しています。

伊香保銘菓・寿屋

 当店のお菓子作りで心掛けていることはあん作りからすべて手作りにこだわる事です。

 こし餡、粒あん、虎豆を餡にした虎豆餡などすべてが自家製です。以前の工場に比べて現在の工場は約三分の一。とても狭く大量に出来ない為、絶えず餡作りに追われています。それでも回転が速く常に新鮮な物を提供出来るというメリットもあります。もう一点、 出来る限り他店には無い個性的な商品を作る事です。

 現在の商品は四品。伊香保の代表銘菓「湯の花饅頭(温泉まんじゅう)」は他店はこしあんですが、当店は粒あんもございます。勿論、機械でなく手で包餡してます。二品目の「すずとら」は煮豆の王様と言われる虎豆を餡にしたキュートな焼菓子。2017年三重で行われた菓子博覧会で金菓賞を受賞しました。女性に特に人気です。三品目は「黒蜜水羊羹」波照間産の黒糖と赤糖など何種類かの砂糖をベースにしたのど越しの良い水羊羹です。和菓子通のお客様に人気です。四品目の「栗羊羹」は真空包装にはせず、日が経つにつれてシャリが出る昔風の羊羹です。

 温泉地としては商品の種類も多く、しかも手作りなので製造にはかなりの労力を費やします。有難いことに来店するお客様に「美味しいのでまた来ました」と言われるとその苦労も吹き飛びます。リピーターのお客様は年々増えています。手作りは大きな商いは出来ませんが、堅実な経営は実現出来ると思います。

 GW後の5月、6月の伊香保温泉は新緑が美しくお勧めです。紅葉時は混雑するのでこの季節が一番好きだという方も多いです。石段と温泉とお饅頭。伊香保温泉へどうぞお出掛けくださいませ。

 群馬県菓子工業組合・伊香保銘菓 寿屋・登坂好一朗