奈良町の和菓子店
とらや、末廣堂、なかにし
奈良市で世界遺産に登録されている元興寺(がんこうじ)の旧境内を中心とした地域を「ならまち」と呼んでいます。当時の道筋をもとに発展した長い歴史を持つ町です。平城京への、遷都以来まちづくりがはじまり、南都と呼ばれる社寺のまちから商業のまちへ、商業のまちから観光のまちへと様々な時代背景の中で盛衰をくり返してきた町でもあります。江戸時代の末期から明治時代にかけての町家の面影を今に伝える「ならまち」は、訪れる人々にやすらぎとうるおいを与え、時には懐かしささえ感じさせてくれる古い町並みです。
そんな町に古くからの和菓子店が多く、いまも個性的なお菓子で地元や観光客を魅了しています。今回3軒をご紹介します。
鶴福院町から望む興福寺五重塔は、電線の地中化により、スッキリとした姿を見せてくれるため、カメラファンの羨望のビューポイントとなっている。丁度、その鶴福院町の中程東側に「和菓子司・とらや」があり、店頭には、和菓子「鶴子柿(つるしがき)」と標(しる)した幟(のぼり)が掛かっている。奈良県の名産品「柿」にちなんで作った「鶴子柿」の生地の中にはしっとりなめらかな白あんに柿ジャムを練り込んだあんが入っている。
昔なつかしい味わいほんのり色づいた柿色のかわいらしい形も魅力のひとつ。
ぶらり散歩の合間に立ち寄ってみて下さい。
「とらや」さんから100mあまり南にある鵲町元興寺正門隣にある「末廣堂」は明治35年創業の老舗です。吉野くずもち・わらびもちなどの製造販亮をしていますが中でも「いちご大福」は毎年11月頃~4月頃に販売している限定版で関西ローカル番組の「ちちんぷいぷい」で紹介されたりその他いろいろなところで取り上げられていて有名です。大きめの九州産苺と白餡が特徴です。売り切れることもあるので前日予約が必要と思います。
「なかにし」さんは町家の面影が残る脇戸町にあります。「五感で感じて頂ける創作和菓子を伝統の味と、創作の心、華やかな彩りを添えて手間ひまかけてお作りしております」のことばのとおり新しい趣の和菓子を目指しておられます。蒸し暑い日が続く夏は、奈良町あいす、井氷鹿、ならまち氷の販売も開始しています。本店にお立ち寄りの際は冷たい食感を、お楽しみ頂ける氷菓を是非お召し上がりください。また県産の卵と蜂蜜を使用した生地で求肥を包んだ「若鮎」、名物「奈良町だんご」も本店と近鉄奈良駅中店でも販売されています。以上3軒をご紹介しましたが、奈良町および近辺には10社に余る和菓子店があります。
奈良県菓子工業組合のHPでは各店が地図上に表示できるようなっています。HPから奈良町あたりを見ていただくと、多くの菓子屋と出会っていただけると思います。
奈良県菓子工業組合専務理事・野崎充亮