各地の菓子店探訪
福岡県菓子店の投稿

野田和光堂

九州のおいしさ詰まった御煎餅

野田拓史さん 古の昔より海外貿易によって発展してきた交易都市博多は、聖一国師が饅頭を日本で初めて伝えた地でもあり、聖一国師に所縁のJR博多駅徒歩4分の所にある承天寺には福岡市菓子協同組合によって御饅頭所の石碑が建立されている。今回はその博多にあり、かつて九州ブロック長を務められた福岡菓青会・野田拓史さんの野田和光堂を訪ねてみた。

野田和光堂の煎餅 野田和光堂は創業以来51年間、煎餅の製造と卸しをやっておられるお店で博多駅の近くにある。伺った時は、ちょうど鶏卵煎餅を製造している最中で、工場内は煎餅の焼ける香ばしい匂いで満ちていた。使用している卵は遺伝子組み換えなしの飼料で飼育された地元の赤卵を使用しているということで、その品のよい卵の甘い香りと熟練した職人の華麗な手わざに、しばし時間が過ぎるのを忘れて見入ってしまった。複数のラインで1日合計約1万~1万5千枚作るという煎餅の種類は生姜煎餅(すりおろし生生姜使用)、海苔味噌煎餅(刻み海苔・味噌使用)、松風煎餅(アオサ使用)、鶏卵煎餅(型を変えて3種類あり)、厚焼煎餅(クッキータイプ)、胡麻煎餅、ピーナッツ煎餅、ビンズ煎餅の8種類あり、特筆すべきは原材料である。国産、特に九州産の中から自分が納得したものを選び抜き、福岡と佐賀にまたがる広大な筑紫平野の小麦粉、味噌は幻の味噌として有名な熊本・山内本店梅屋さんの無添加味噌、アオサは大分産、生姜は熊本か長崎産、海苔は中洲の寿司屋も使っている有明海で採れた品を特注で刻んでもらって使用しているというこだわりだ。創業以来、消費者の安心・安全を第一にそして地域を盛り上げようと煎餅を作り続けてこられた頑なな姿勢には、同じ菓子屋として頭の下がる思いである。最近では、筑前一之宮・住吉神社や十日恵比須神社の神饌としてもご贔屓戴いているという。

 お菓子談議に花を咲かせていると、博多を代表する祭り・博多祇園山笠に話が及んだ。野田さんは彼此20年以上、東流二番棒の舁き手をしているそうで、自主トレを毎日欠かさずしているという。ヤマを担ぐ男の勲章とでもいうのか野田さんの右肩にはピンポン玉位のコブが出来ていた。触らせてもらうと野田さんの一本気な人となりが伝わってきそうだ。他にも地域の活動に積極的に参加されているという。そういえば、来る途中道に迷って幾人かに道を尋ねたが、皆さんが野田和光堂と野田さんの事を知っておられ、丁寧に道を教えて下さった事は偶然ではあるまい。最後に「食べた方から『おいしかった。ありがとう。』といったお手紙を頂戴する事がとても嬉しい、今までの味を大切に守りつつ、新しい商品も作っていきたい。」と語っていた野田さんの笑顔が印象的だった。

 帰りに承天寺まで車で送って戴いた。配達中の野田さんと別れた後、またも迷ってしまったが、親切な方が石碑の所に案内して説明までして下さった。歴史と温もりのある博多の町で頑固に守り、作り続けてきた野田和光堂の九州のおいしさが詰まった煎餅の味をHPでも購入出来るので、一度ご賞味あれ。

 九州ブロック長・田中耕太郎

店舗データ

㈱ 野田和光堂
〒812-0017
福岡県博多区美野島1丁目9-27
電話:092-431-4425
FAX:092-475-3315
URL:wakodou@aurora.ocn.ne.jp