各地の菓子店探訪
岡山県菓子店の投稿

御菓子処 清邦庵

地元に根づく店構えと菓子作り

御菓子処・清邦庵 今回訪れたのは、自然豊かな風景の広がる岡山県の矢掛町です。矢掛町は歴史のある町で日本でも数少ない本陣、脇本陣の両方の建物が現存することでも有名です。本陣というのは、江戸時代の参勤交代で大名や公家、幕府の役人の宿所に使われた屋敷のことです。

 秋には大名行列が行われ多くの観光客が集まります。

 その歴史かおる町の商店街にあるお店が御菓子処清邦庵です。お話を伺ったのは店主渡辺博幸氏です。渡辺氏は大阪の専門学校で勉強し、福山市、大阪で修業をして今地元で頑張っています。先代の清志氏は卸専門で菓子づくりをしていましたが、博幸氏が帰郷した際に店舗を構え屋号清邦庵と名付けて店売りを始めました。清邦庵は両親への恩返し、そしてなにかかたち、名を後世に残したいという思いから両親の名前の一文字をもらって命名したそうです。とても感動的な話を聞かせていただきました。

姫の舞 店造りにはこだわりがあり、取り壊す古民家から柱や瓦をゆずってもらい、それを使って昔ながらの雰囲気を出しています。私もはじめ、店を構えて20年経つと渡辺氏にいわれたとき驚きました。もっと古くから創業している感じがしたからです。そのこだわりで昨年店の隣にカフェをつくられたそうです。こちらもすごく落ち着いた雰囲気で近所の方々の憩いの場になったり、遠方からのお客様もいらっしゃるほどの盛況とのことです。

 店の人気商品は塩豆大福で丹波の黒豆を丁寧に煮て、餡は塩味のあるあっさりとした味に仕上げています。また期間限定のいちご大福も人気で月に1万個も売れるそうです。

 そして最近販売を始めた商品に「姫の舞」があります。昔矢掛町の本陣に篤姫様がお泊りになられたという史実からイメージをふくらませたそうで、ふわふわのスポンジ生地の上に甘く煮たリンゴを練り込んだ生クリーム餡をのせてある洋風な味に仕上がった菓子です。

 また地元で採れる古代米の黒米の米粉を使ったもう一つの商品「とのの宴」とともに売り出したところとても評判がよく早くも人気商品となっているそうです。

 倉敷芸術科学大学製菓衛生師別科で講師も務めている渡辺氏が生徒にいつも言っている言葉が「和菓子は目で楽しむもの。おいしさを求められるのは当たり前。いかにお客様が品に手をのばしてくれるかが大事。」だそうです。生徒に厳しく指導することで、自分の仕事にも厳しさをもとめているのだと思います。

 最後に渡辺氏はこれからも生菓子をメインとし、節気の和菓子を大事にしていき地元に根づく店構え、菓子作りをしていきたいと話してくれました。

 今回は矢掛町の情緒ある景観、渡辺氏の男気あふれる人柄にふれられた一日でした。皆様方にもぜひ訪れていただきたいと思います。

 中・四国ブロック長・高橋宏暢

店舗データ

御菓子処 清邦庵
岡山県小田郡矢掛町矢掛2625
電 話 … 0866(83)3636
FAX … 0866(83)3637
営業時間 … 9:00~19:00
(日・祝日 … 9:00~18:00)
定休日 … 火曜日