各地の菓子店探訪
香川県菓子店の投稿

讃岐茶菓『大禹謨(だいうぼ)』

特産物を使い飽きのこないお菓子

 江戸時代初期、津藩主 藤堂高虎配下で水利技術の大家であった西島八兵衛が讃岐生駒藩に招かれ、満濃池を初め多数のため池や香東川などの大治水工事が行われました。日々の生活と直結している水を治めることの重要性は今も昔も変わりません。

 かの大規模な工事が完了した折、西島八兵衛は治水の安全を祈願し利水の神と謳われていた古代中国の夏(か)王朝“禹(う)”王の名にあやかり「大禹謨(だいうぼ)」と刻まれた石碑を建てました。文字の意味は「禹(う)王の遠大なるはかりごと」という内容です。時代は流れ、この石碑は二度の流失や埋没を経て近年偶然発見され現在は栗林公園内の商工奨励館中庭に安置されています。

 当社はこの讃岐の地を水害から守っていただいた西島八兵衛さんに深い敬意を払うと同時にこの数奇な運命にあった大禹謨の石碑に郷土先人の息吹を感じ強く惹かれました。そしてこの古(いにしえ)の史実を畏敬の念をこめて一つのお菓子として広く皆様にお伝えしていければ、と思い立ちました。

 香川県産の特産物を数多く網羅しながら奥深くかつ飽きのこない永く皆様に親しんで頂けるお菓子をめざし、じっくり時間をかけて出来上がったのがこの讃岐茶菓『大禹謨(だいうぼ)』です。

 饅頭の皮には小豆島オリーブオイルと小麦は讃岐の夢2000を練り込み、中の餡には香川県産の黒豆、讃州黒そしてその甘味には讃岐和三盆糖に加え、近年話題を呼んでおります希少糖を含有するレアシュガースィートを使用しております。(希少糖は血糖値の上昇を抑制する効果が認められ現在特保の認定を申請中の特殊な糖)

 大禹謨の石碑を模した素朴な形。経てきた長い歳月を思わせる表皮の風合い。発売開始より皆様にはご好評をいただき、香川県産品コンクールにおきまして最優秀賞を受賞また、今年ひろしま菓子博2013では図らずも名誉総裁賞という栄誉を賜りました。

 私どもの永い菓子作りの中でも正に希少な一品となりました。

 香川県菓子工業組合副理事長・包末招