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栗きんとん発祥の地 中津川

組合の結束・交流で技術向上

栗きんとん 文豪島崎藤村の「夜明け前」に「木曽路はすべて山の中である」の書き出しで知られ、日本の近代文学を代表する小説のひとつとして評価されているこの地が岐阜県中津川市であります。和菓子にはその土地、その環境でしか生まれなかったものが数多くありますが、その一つが「栗きんとん」であります。

 この地方は山間地であり、古来より春夏秋冬自然からの恵みはとても貴重で大切に利用してきました。江戸時代にさかのぼりますが、秋には山栗が実り、自生している栗を各家庭では収穫し、秋の味覚を栗ごはんにしたり囲炉裏で焼き栗、茹で栗、かち栗にするなど生活の知恵でいろいろな食べ方をしていました。蒸した栗を切って中身を取り出し、すり鉢でつぶし、塩、あるいは砂糖を入れ出来上がったものを餅や、ご飯にまぶしたり、余ったものをふきんで絞ったりして食べていたものが栗きんとんの始まりとされています。

 その後、明治の中ごろになり菓子屋によって商品化されたと伝えられています。

 大正時代になると中津川で栗の栽培がはじまり、大粒の栽培栗をたくさん使えるようになると、栗きんとんの生産量はどんどん上がっていきました。それにつれて菓子屋も増え、それぞれの店が味を競い合い鍛錬し、その結果、地域ぐるみで菓子文化が発展し、「栗菓子の里」として知られるようになりました。また、中津川では文化・伝統などに秀でた所であり、数多くの文化人たちを輩出しています。このような事から、中津川では古くからお茶を飲みもてなす習慣があり、お茶を愛する人が多く、それで必然的に菓子について「うるさい」人が増えたようです。口の肥えた粋人が良い菓子を育てたといえるでしょう。

 現在、中津川菓子組合二十三軒で構成しています。菓子処にしては少ないように感じられますが一店舗で複数店構えている店が多く、中津川市内で約四十店あり、非組合員も合わせますと七十店を超え、人口(約八万五千人)比するとかなりの数になります。まさに激戦区で、その中で各和菓子店が独自性を出しながら努力しているのが現状です。

ふるさとじまん祭 当組合員らは結束しています。一般的には同業者は競争相手ですから、あまり立ち入った話もしませんが、当組合では何でも話します。組合が結束できるのは顧客の住み分けが進んでいるからでしょう。中津川菓子組合では昭和六十二年より菓子まつり(ふるさとじまん祭)を行っておりますが、昨秋開催された菓子まつりでは、市外県外より十四万人の方々が栗きんとんを目当てに来られました。同まつりを通じて各組合員が良い意味で対抗意識を持ち技術力向上のため日々努力し、まつりで市内の菓子店が一堂に集まり、新製品誕生のきっかけをつくる。菓子処中津川を支える原動力なのです。

 中津川菓子組合顧問・原善一郎

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