『息子とどう向き合うか』
菓子店の後継者問題
平成26年6月19日(木)、高岡のホテルニューオータニにて、富山県菓子工業組合の第42回総代会が開催されました。その後の懇親会では、日頃お付き合いの少ないお菓子屋さん同士でテーブルを囲むように配慮し、和気あいあいと懇談が弾んでおりました。この機会にと感じ、残り30分の時間で、私(中尾吉成)から問題提起を行ってみました。それは、『組合員の大幅な減少、コンビニや通信販売などの台頭による売上減少。そして最も大きな課題の一つに後継者問題があります。後継者がいない事はもちろんですが、後継者となった息子とどう向き合っていく事が必要か』という内容のものです。
すると、ある方の報告。息子さんは学校卒業後会社勤めをし、店を継ぐ気配もなかったそうですが、ある時急に戻って来て、店を継ぐと決めたそうです。喜ばしいはずですが、帰ってきてからは、様々な場面で息子さんとの意見の食い違いや対立があり、悩んでいるそうです。中でも、息子さんはサラリーマン生活の影響から、週2日の休日が大前提という考えだったり、お菓子の値段の決め方などにも大きな食い違いがあるそうです。
そしてもう一人の方から、次のような報告が。その方はどんな事でも息子さんに話をし、相談して、お互いの意見をぶつかり合わせるそうです。そのうえで、今後どう進んでいくのかを二人で決定されるそうです。が、お菓子屋さんに限らず、ここまでできる親子関係を持てるのは、とても珍しいのではないでしょうか。会場の多くの方もなかなか本音で話ができないとか、お互いの好きな事を言い合っている状況がほとんどという声もありました。この現実を打開していくには、まずは親側が、会話のできる状況を努力して作っていく必要があるという事でしょうか。
そう言う私も、息子が大学卒業後、家業を継ぐと言ってくれましたので、今は工場や店舗を経験させ、いずれは社長を譲る時期を迎える予定です。息子が家業に携わって5年経ちますが、この間、やはり沢山の葛藤がありました。今後も全てうまくいくとは到底思いませんが、振り返れば、自分自身も若い頃は、親との意見のぶつかり合いがあると、結局は会話もしなくなるという苦い経験をしてきたわけです。
やはり会社を存続させ、より発展させるには、親と子のコミュニケーションは絶対に必要不可欠です。親子だからこそ、慣れ合いや言わずともわかると言う気持ちを横に置き、冷静に向き合うべきではないでしょうか。その為にも、まずは親の過剰なプライドや意地を捨て、親から子へ会話を進めていく姿勢、親の背中を見せつつも、時には正面から向かい合い、お互いの気持ちを伝える事が大切であると感じた貴重な会でした。
富山県菓子工業組合・㈱中尾清月堂代表取締役社長・中尾吉成