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大分県レポートの投稿

まずは安心の確保から

組合加入のメリット

 私が菓子工業組合に勤め始めたのが岩手菓子博の開催前で、今から約16年前のその頃は現在の倍以上の組合員が加盟していて、300以上ある企業名と代表者氏名を覚えるのに随分と時間を要した記憶がある。しかし毎年度ごとに脱退者が増え続け、なんとか支部数は14を保っているものの、今年度から1社だけになった支部もあるほど、組合員の減少は深刻な問題となっている。

 脱退の理由のほとんどが後継者不足による廃業なのだが、中には「組合に入っていてもなんのメリットもない」と言う理由で脱退する者もいる。毎年同行させてもらっている九州ブロック協議会などでは、似たような状況の県もあると聞き、県中央会の会員でも同じ問題を抱えている異業種の組合は少なくないと聞く。おそらくこのようになるずっと前からどの組合も「メリット」について意識し、様々な事業に取り組んだことだろう。当組合も平成16年度以降、積極的に助成事業を利用して各種セミナー並びに技術講習会の開催、ホームページを開設と同時に各店舗・代表菓子の紹介、組合構成企業の永年勤続従業員表彰などを行い、たくさんの喜びの声を聞くことが出来た。しかしこれらがニーズに合っていない企業から見ればメリットにはならないようで、その後も「組合に入っていても意味がない」と言う声を聞くこととなる。その度に、掛金の負担がいらない全菓連PL保険(生産物賠償責任保険)に加入出来る補償限度額は組合員あたり年間100万円。菓子工業新聞及び当組合広報誌で最新情報を得ることが出来ることを説明し、あとは「お気軽に要望を言って下さい」と言うくらいしか出来ない。

 組合組織があることで、各業界の秩序が保たれているのは間違いないのだが、具体的に説明し納得してもらうのが難しい。そんな異なる組合員ニーズに少しでも応えたい田口芳信理事長は、業界でもたまに被害報告のあるクレーマー詐欺をはじめとし、雇用者とのトラブル、商標権の無断使用などの各種問題対策として、この11月より地元の弁護士と顧問契約を締結し、当組合構成企業であれば30分程度の無料相談を受けてもらえるようにした。もちろん問題が無いのが一番良いことだが、商品についてのクレーム詐欺などは、商売をしていれば一度は狙われるであろう身近な犯罪となっている。対策マニュアルはあっても悪質な場合は電話で長時間ゴネ続けることもあるらしく、仕事に支障をきたすことになる。そんな際に「顧問弁護士に相談します」と言うと相手が電話を切るケースもあると聞いた。

 もしもの時に経験と知識の豊富な法律のプロに相談することで、判断を誤って被害を大きくすることがなくなり「組合の顧問弁護士に相談します」と言えることで詐欺師を牽制することも可能になった。PL保険同様に安心という一つのメリットとなり、執行部役員の想いが少しずつ業界に浸透することで加入希望者が現れ、再び昔の賑やかな組合に戻っていくことを願っている。

 大分県菓子工業組合事務局長・早瀬大雄