『深秋の姫街道』
皇女和宮降嫁の旅に寄り添う御菓子
塩尻市は長野県のほぼ中央にあり、松本盆地の南、中山道の木曽への入り口に位置しております。街なかから雄大な北アルプス、穂高岳の峰を仰ぎ見る景色も、自慢のひとつです。
また、昔より中山道に善光寺街道が交わり、四つの宿場町がそれぞれ栄えていました。
本年、塩尻四宿四百年祭が企画されました。そのメインイベントとして、江戸末期の皇女和宮様の降嫁の行列を再現する『皇女和宮御下向行列』が開催されることになりました。
その中で、市のブランド観光課より菓子組合に「行列に持参したとされる菓子を再現して販売できないだろうか?」と話がありました。
組合員の皆に呼びかけましたが、秋の行事もあり、各店舗の仕事も忙しい中、又当時の資料も少ない事もあり、はたして参加してくれるだろうかと不安でもありましたが、和菓子を商う五店が集まってくれました。
残された資料を基に話し合い、当時は日持ちのする押し物、落雁、飴などが主でしたが、当時の和宮様を、今の和菓子で『おもてなしをしたい』と、各店で新しい菓子を考える事となりました。
私以外は二代目、三代目の若手。創意工夫をして新しいお菓子を考えてくれたと思います。又、こんな御菓子の詰合せにしたいと相談した紙器会社の若社長さんも、思っていた以上のかわいい箱を作ってくれ、企画・広報の市の担当者もかけ紙のデザインなどにとても良い物を作ってくれました。
そして、各店自慢の五種の和菓子と、和宮様の好物であった金平糖を加えた六種を詰合わせにした、愛らしい記念菓子『深秋の姫街道』が完成のはこびとなりました。
この記念菓子は十月二十六日の行列の当日に各宿場で販売され、とても喜ばれました。
記念菓子完成が嬉しいのはもちろんですが、皆と話し合い試行錯誤した日々こそが、価値ある物であることと信じております。
いつもはライバルの五店ですが、力を合わせ『深秋の姫街道』を作ったことで得たこの評価を、各店がどのように活用していくかが、これからの課題でしょう。
長野県塩尻菓子工業組合長・小澤義忠