柏餅
日本の四季にはそれぞれ風情があり、この風情を生かした和菓子があります。この和菓子は幼い思い出から大人になっても心のふるさととして息づいています。この和菓子を時代に即した商品に育てるため、今一度掘り下げて考えてみました。
五月の飾句は柏餅です。三月のひな祭りに続く歳事菓子で男性ばかりでなく家族全員で柏餅を楽しむ一日です。最近は外郎生地を包餡機で中餡を包んで柏の葉を巻いて柏餅と売り込んでいるお店もありますが、これが柏餅と浸透するのが恐ろしい。柏餅本来の歯ごたえ。蛤形や兜形と言われる独特の形。地方によっては嫁ぎ先から実家へのお返し品として、また、実家から嫁ぎ先へのお祝い品として届けられるお目出たいお菓子でもあるのです。柏餅は江戸時代後期町民の生活が豊かになり始め、節句を楽しめるようになって売り出された。町民は時あるごとに高価な糯米を使用した「おはぎ」「大福餅」を入手することが出来るが、貧しい武士は高価な糯米製品を入手出来ない。そんな時粳米を使用した安価な餅らしい製品に一気に飛びつき我が子の成長を願ってお祝いしたとされている。五月は蛤が旬で蛤形にしたと言う節と、武士は大将の兜にあこがれて兜形にしたとされている。普段お菓子など口に出来ない時代に、我が子の成長を願った端午の飾句のお菓子として持てはやされ、今なお続いている。この柏餅を次の世代へ伝えるためにも本来の味を作り続けて頂きたい。今回は水挽き上新粉の使用と二度蒸ししない方法を紹介する。生地の蒸し時間はセイロの大きさと水こね量によって変えなければならないが、過去は七部蒸しと言われたが今回は完全に蒸し上げる。
●配合A(従来の柏餅)
上新粉…………………500g
水イ……………………350ml
浮粉 …………………… 25g
水ロ …………………… 50ml
●工程
①上新粉にイ水を加えて手でこねる。
②濡れ布巾を敷いたセイロにちぎり入れて強い蒸気で20分位蒸す。(蒸し過ぎると腰が出て形作りしにくくなる)
③臼に入れて搗きまとめ、冷水の中に漬けて冷ます。
④再度臼に入れて搗きまとめ、浮粉にロ水を加えて溶かして加え搗きまとめる。
⑤手水を使用して35g位に切り、手の平で6㎝の12㎝に延ばす。
⑥中央手前に餡玉15gをのせて二つ折りにする。
⑦濡れ布巾を敷いたセイロに並べ強い蒸気で五分位蒸す。途中二~三回セイロの蓋を開けて冷気を入れて気泡を切る。
⑧セイロのまま冷気を当て冷ます。
⑨表面に編み渡し(金網)等を掛けてセイロを裏返して冷ます。
⑩完全に冷ましてから茄で戻した柏の葉に包んでビニールの小袋入れて販売する。
●配合B
水挽き上新粉…………450g
餅粉 …………………… 50g
水イ……………………350ml
上白糖 ………………… 50g
水ロ …………………… 10ml
●工程
①水挽き上新粉、餅粉に水イを加えて手でこねる。
②濡れ布巾を敷いたセイロにちぎり入れて強い蒸気で30分位蒸す。
③臼に入れて搗きまとめ上白糖を加えて搗きまとめ硬さを調節する。
④荒熱が抜けたら手水を使用して35gに切り、手の平で6㎝の12㎝に延ばす。
⑤餡玉15gを手前に置いて二つ折りにする。
⑥中餡を包んで厚手ビニールの上に置いて冷ます。
⑦完全に冷まして茄で戻した柏の葉で包んで小袋に入れて販売する。
・中餡
小豆こし生餡……… 1000g
グラニュー糖…………550g
水………………………300g
ハローテックス ……… 80g
食塩……………………… 2g
白生餡……………… 1000g
グラニュー糖…………600g
水………………………300ml
白味噌(料理用)……250g
ハローテックス ……… 50g
・中餡は饅頭用よりも硬めに練り上げる。
・最近は手水代わりに(ミズ切り)食ローを使用するが配合Bでは二度蒸ししないので食ローの味が出てしまうので手水を使用する。
・中餡包は生地が熱い内に行う。
・温かい内に葉を巻くと葉が皮についてしまうので冷めてから葉を巻く。
日本菓子専門学校 鎌田克幸 氏
和菓子講習 基礎編より