川幅日本一どらやき
鴻巣市 木村製菓舗
昔から菓子業界内の長老や大先生から「竿物をそのまま売るように研究しなさい」とよくご指導を頂きますが、今回は大きい菓子を大きいまま売ろうという取り組みを紹介します。紹介する製品は鴻巣市で営業してます木村製菓舗の『川幅日本一どらやき』です。この製品は大きさ254ミリ重さは1・2キロあります。
鴻巣市は雛人形造りが盛んな旧中仙道の宿場町ですが、隣接する熊谷市や行田市と比べて有名でもなく目立った場所でもありません。市観光協会が目を付けたのが鴻巣市と吉見町の間を流れる荒川の国土交通省設定川幅(堤防と堤防の間)が2537mと日本一だということです。川幅と言ってもほとんど河川敷で、飛行船基地として有名なホンダエアポートもこの少し上流河川敷にあります。この川幅にちなんで平成21年に幅8㎝の幅広うどん「こうのす川幅うどん」が最初に誕生し、予想外の人気で川幅うどんの提供店が瞬く間に増えました。うどんが商売になるのだから菓子も何か出来ないかと言うことで各店それぞれ研究を始め、平成22年に木村製菓舗さんが造ったのがこの「川幅日本一どらやき」です。
コンセプトは川幅同様に日本一大きいどらやきを市販してみせようということで試作を繰り返しましたが、やはり苦労があったようです。現在のどらやきはふわふわなかすてら配合のかわが主流ですが、それだとこの大きさに焼いて崩れてしまいます。そこで思い切って強力粉と上南粉を混ぜてかわを焼いています。これによってかすてら種と違いかなりの食感と噛み応えが出ますがこの商品には良くマッチしています。ただのどら焼きだと殺風景ということで荒川の流れの表現に渦巻きと魚を焼印し仕上げ、また荒川は浅瀬でありますから、半割れ栗を24個中餡に並べて子供に見立て、水遊び場で有ることを表現しました。
お話を伺ったのは四代目店主木村功さんですが、お店の創業はいつだったかあまり気にしたこともなくよく判らないそうです。住んでる人間がいろいろと個性的というのが埼玉の県民性です。この川幅日本一どらやきも正当派和菓子ながら個性的で豪快な商品で、自分の性格にあわせた菓子を開発したといういかにも埼玉県らしい製品です。この商品、知名度が上がるほどに売上も伸びてきており、数年でお店一番の看板商品に成長しました。そのまま食べて大喰い自慢するも良し、切り分けてお茶菓子にお出しするも良しと、お客様に大変利便性が高いと喜ばれている良い製品です。
埼玉県菓子工業組合専務理事兼広報・中島祥夫