各地の菓子店探訪
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つるし柿本舗新栄

秩父夜祭りと深里のつるし柿

深里のつるし柿 今回は「あちゃむしだんべにつるし柿」と秩父音頭にも方言共々名物と唄われているつるし柿(干し柿)を使ったつるし柿本舗新栄さんの銘菓「深里のつるし柿」を紹介します。製品は干し柿に塩梅した餡を詰めたもので1個230円です。この製品は広島菓子博でも販売し大好評でした。

 例年二十万人の人出で賑わう秩父夜祭りでは多くの店につるし柿が並び夜祭り土産につるし柿と昔から有名で、各店は仲買人から柿を買い祭り価格で販売します。これは商売になると考えた店主の小林俊夫さん、自分で農家を回って柿を集め加工し駅前で売ったところ思った以上に売れました。しかし生産者は減る一方。そこでより深里の吉田町農協(現秩父)に加盟する二十数人の生産者と柿生産事業団を設立し、苗木を提供し生産した柿は全量買い取るという本格的つるし柿販売をはじめました。祭りは年に一回、自慢の柿を通年売るにはやはり菓子が良いという事で柿ゼリー・柿羊羹と販売し試行錯誤で辿り着いたのが「深里のつるし柿」です。

 かつて昭和初期まで米収穫量日本一にして豊かな野菜場であった埼玉県内にあって、秩父地方は独自の食文化を育んできました。秩父山脈は二千㍍超の山々が連なり日本有数の霊場であり、今でも研究者が日本狼の生息を信じる険しい所です。その山脈南側は山梨フルーツパラダイスの豊かな甲府盆地。北側斜面と盆地が秩父地方ですので有利な農業ができず陸田でソバ栽培が主で奥秩父では越冬にトチの実も食べていたようです。干し柿は無くてはならない大事な保存食糧でした。必需品として歴史を重ねたつるし柿商品「深里のつるし柿」大変良く売れています。新栄さんは秩父らしさをモットーとした菓子作りを心がけたいと言う事で、次は地元特産メイプルシロップを使った製品を研究中だそうです。また「秩父屋台最中―栗囃子」も看板商品で良く売れています。「秩父屋台最中」の名称は市内各店共通で使用し各自最中をつくっているそうで興味深い話ですが、機会があればまたレポします。

 かつて秩父はドン詰リと揶揄されていた地域でしたが埼玉山梨を直接結ぶ雁坂峠全面開通で状況は一変、観光に目覚め現在は埼玉一の観光地です。秩父を舞台としたヒットアニメ通称「あの花」も西武鉄道とタイアップしアニメロケ地聖地巡礼と銘打ち若年層取り込みにも余念がありません。

 秩父観光の売りはあるがままの秩父の原風景、なにか懐かしい昭和レトロです。秩父旅の締めくくりに本店・道の駅や各名店コーナーでおみやげに新栄さんの本場のつるし柿製品を是非ご賞味下さい。

 埼玉県菓子工業組合専務理事兼広報・中島祥夫

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