あんこまつり&お菓子まつり
金蔵 巍氏を偲んで
去る2月8日、鹿児島県製餡協同組合様の主催する「あんこまつり&お菓子まつり」の協賛をさせていただきました。
当日は、冷たい雨がそぼ降り、吹きすさぶ強風に煽られ、体熱が奪われるような悪天候ではありましたが、組合員を中心とした店舗販売や製餡組合の「ぜんざい配布」「餅つき」、菓青会の「練り切り実演」、洋菓子協会の「チョコレート作り」などなど盛り沢山のイベントに、1500名の参加者が大いに楽しんでくださいました。
なかでも当組合自慢のベテラン菓子職人である金蔵巍氏と比良田輝明氏による「『鹿児島名産かるかん』実演」コーナーは大人気を博しました。
見学者からは「かるかんってこんなふうに作られるんですね。」「凄い職人技ですね。」「生で見られるなんて感激。」と感嘆の声があがりました。
手際よく作られては、次々と蒸し器にかけられる様を、寒さに震えながらも片時も離れず見物する方々や、できたてほやほやの湯気のたつ「鹿児島名産かるかん」ゲットを目指して早々と行列を作る老若男女の方々。
多くの方々の感動と期待を込めた熱い視線を受けながら、黙々と作り続けるお二人は、自店の使い慣れたガスボイラーではなく、用意された電気ボイラーに少々手を焼きながらも、配布時間には確実に仕上げるという職人技を余すところなく見せてくださるのでした。
更に、合間には、餅つきに慣れない若者に代わり、比良田氏が杵をつき、金蔵氏が合いの手を入れる名コンビぶりで会場を沸かせました。
寒さに震えながらも、心地よい疲労と達成感をいだきながら、無事にイベントは終了したのでした。
そして、それから2ヵ月も経たない3月31日、元気そうに見せながらも、実は重い病魔と闘っていらっしゃった金蔵氏は、生涯現役のまま83歳の人生を閉じられました。
中学卒業とともに菓子屋に弟子入りし、努力に努力を重ねて、その身体に染み込んだ職人魂。技術力の高さのみならず、菓子業界発展のためには、どんな依頼にも「否」という言葉を発することなく取り組んだ、ボランティア精神に優れた姿勢は、後に続く若いお菓子屋さんにとって大きな手本であり、大いに刺激になったことでしょう。
私たちは、氏の深い慈愛の眼差しと、困難を吹き飛ばすような弾ける笑顔を生涯忘れることはないでしょう。言い尽くせぬほどの感謝を胸に。
鹿児島県菓子工業組合事務局長・惠島理子