各地の菓子店探訪
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納屋橋饅頭万松庵 納屋橋店

創業者由来の地で復活

納屋橋饅頭万松庵・納屋橋店 名古屋市の中心部には、名古屋城築城の際に資材運搬のために福島正則が開削した運河「堀川」が流れています。

 その堀川にかかる名古屋市のシンボル的存在でもある「納屋橋」の西北角に「納屋橋饅頭万松庵・納屋橋店」を、2013年に開店した同社中島康博様にお話をお聞きしました。

 「納屋橋饅頭」は、創業者が1886年に「伊勢屋」の屋号で酒饅頭などの販売を納屋橋のたもとで始めたのが創業です。その後1913年に納屋橋が架け替えられた時に、伊勢屋と「長命うどん」の2軒が納屋橋の「渡り初め」を行うという栄誉に浴したことを機会に、屋号を「納屋橋饅頭」に改めたということです。

 しかし、その後納屋橋饅頭の本店は元の場所からは移転し、土地も売却されて納屋橋のたもとには「納屋橋饅頭」の店がないという状態となっていたため「納屋橋饅頭万松庵」が同所に出店することを決意。交渉の末に計画が進んでいた養護老人ホームの1階の一部を借りて「納屋橋店」を開店することが決定しました。

 「渡り初め」から99年目に、納屋橋に「納屋橋饅頭」の店が復活して「発祥の地」で納屋橋の架け替えから100周年を迎えることができたということです。

 店の前を流れる堀川は、昔は名古屋の大動脈として多くの舟が行き交い、かつては水運で働く人々に蒸したての饅頭を提供して喜ばれていたということから、「納屋橋店」では、当初からオープンキッチンで製造販売することを計画。現在「納屋橋饅頭」は名古屋銘菓として主要駅や空港などで販売されていますが「納屋橋店」では他の売店にはない「蒸したて」をコンセプトに「納屋橋饅頭」を提供しています。

 また、現在の「納屋橋饅頭」は技術革新により製造日を含む4日間が消費期限となっていますが、「やはり生菓子は作った日がうまい」というのも店のポリシーになっています。

 さらに「納屋橋で店を復活させてもらったのだから、名古屋の文化も発信していきたい」との考えから、店では納屋橋架け替えや、水運で栄えた当時の写真や資料などを随時展示し、できたての「納屋橋饅頭」を味わいながら堀川や納屋橋の歴史に思いを馳せることができます。

記念の盃 「納屋橋店」の開店後に、思いがけない出来事があったということです。ある会合で「納屋橋饅頭の創業者が、その昔うちの店に修行に来ていた」という三重県の「丸井屋」店主と出会い、後日訪問して話をするうちに「納屋橋渡り初めの記念品の『盃』がある」ということが判明。三重県の和菓子店で修行したということは聞いていたものの、何年か前に屋号が代わっていることもあり全く忘れられていたということで、その100年前の「記念の盃」も「納屋橋店」で見ることができます。

 愛知県菓子工業組合・林圭一郎

納屋橋饅頭万松庵・納屋橋店
名古屋市中村区名駅5丁目25番12号 ジョイフル名駅1F

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