門前の和菓子処 ‟和田”
土佐国一ノ宮
土佐唯一の大社、土佐神社(土佐国一ノ宮)の創建年代は明らかではない。しかし、御祭神、味鉏高彦根神(一言主神)を土佐に流したという雄略天皇は5世紀後半の人物で、土佐国では祭祀は同時代に始まったと推測されている。その後、都佐坐神社の名で土佐国の延喜式内大社に列せられ、鎌倉時代には一宮となった。特に武家に崇敬を受けて、戦国時代の長宗我部元親氏や山内忠義氏は土佐最上の祈願所としたとのことです。(通称「しなねさま」と言われ、新稲の意味だとする説があります)
この地域は神仏習合の場所で、東隣には四国88ヶ所霊場の30番札所善楽寺もあり、土佐神社は国の重要文化財として歴史の薫りを今に伝えています。遅ればせながら初詣をさせていただいた折、その足で門前に店を構えている餅和菓子
処‟和田”さんへお伺いし、銘菓「つぶて石」の言われを聞かせていただいきました。
創業は昭和40年、初代和田富茂氏が餅菓子の製造卸を始めたのがきっかけで、2~3年の後に小売店舗を設けられたとのことです。現在の社長、武士氏は大阪で修業したのちに16年前に帰高して後を継いでおられます。
その2代目武士氏が新しい菓子の開発をとの思いから、土佐神社に飛来した‟つぶて石”の伝説(境内の北東に位置する石で、大和から土佐に遷った味鉏高彦根神はまず賀茂社に鎮まったものの場所がしっくりこなかったため‟つぶて石”を投げて新たな社地を定めたと言われている伝説)をヒントに考案表現した焼菓子、銘菓「つぶて石」が生まれました。この和菓子は土佐神社の祭祀に使われており、厄除け等に配られるとお聞きしました。今は2月3日の節分を控えた忙しい最中にもかかわらず応対いただき、2時間程度お話を聞くことが出来ました。その他にも色々な菓子を手がけておられますが、別に銘菓「土佐一宮」も作られています。
また、武士氏には兄上がおいでで、その方和田道徳氏は高知県香南市野市に於いて洋菓子工房‟コンセルト”を経営されております。ご兄弟揃って菓子店を営んでいる所は高知県下では珍しく、今後益々ご発展されていくと思われます。菓子業界にも明るさがある思いでお店を後にしました。
高知県菓子工業組合事務局長・森下広和