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可児融著「創菓季心」刊行

茶席菓子のデザインと製法

創菓季心 可児融氏は昭和9年1月岐阜県生まれということもあって、戦後の食料不足の中で栗や芋を使った素朴な昔の菓子から、茶道の先生でもあった母親の影響から茶席菓子に強く興味を持った。

 菓子修行の中でも、若い頃東京に憧れて上京し、関東の薄くて冴えた色彩、繊細で手際のよい美麗で、言わば写実的形態の上生を見習いながら関西から東京に出店している生菓子を定点観測的に観察してきた。

 関東の一般的なきれいな真っ白な白餡より、関西の茶席菓子は味を中心に考えるせいもあるのか色の冴えはないが、暗い茶室でも色目が分かる濃いめの色と抽象的な色合いと形態の表現をよしとする。両地域の茶席菓子を知り、京菓子に関東風を加味して70年、名匠の集大成であり、温厚な人柄が偲ばれるまったりとした形と技術を後世に伝える貴重な記録誌とも言える。

 1カ月三回デザインを変え5、6種でも18種、さらに特別注文の図案も加えてあるので、四季十二ヵ月のデザインは270点、全て鳥の子紙風琥珀紙に水彩画風カラー印刷。

創菓季心 製品は見る人の技能程度に応じて、分かり易く材料の添え書きがあり、個々の形作りは手法として詳述がある。

 作品には個々に俳句が添えられ、風雅な季節感を強調していると共に趣味、興味を持って技術者以外の人が見るだけでも楽しめる書。

 季語、古語の解説としきたりの備考も付いている。

 旧暦、二十四節気の解説雑節その他の行事も掲載してある。

 製法と原材料の加工法として、餡と生地40種の製法が詳記されている。包み物(饅頭等)と述し生地は別項に記載されているし、外良では包み物、延ばし生地、ぼかし方は、こなしも含めて独特と思われる方法が記されていて興味深い。

 米穀粉、山芋類の異い、花びら餅の謂れ等、基礎知識としても読める。

 菓子の単行本の中では有名出版社の物が多いが、和菓子の老練製造技術者の書は少なく、たとえば解説の中で新粉、糯米の餅、外良、四分六種、求肥や羽二重餅等、総て餅と表現した書籍等もあり、そうした中では何と言っても、菓子専門誌の製法等を永年ゴーストライターをしていた和菓子技術者が書いているので、初心者からベテラン技術者まで参考になると思われる。

 A4版、130頁、限定出版、頒布価額一万円(税込)

問合せ先 千葉県菓子工業組合内 「創菓季心」係
〒260―0016 千葉市中央区栄町四一―三
TEL 043―225―0153/FAX 043―221―3443

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