海洋プラスチックごみと菓子包装のこれから
大阪府菓子工業組合は、10月25日、大阪府病院年金会館コンベンションホールで講習会を行いました。テーマは「マイクロプラスチック問題と菓子包装」について。
まず、野村泰弘理事長があいさつに立ち「昨今、大きな問題となっているプラスチックゴミの海洋流出問題は、菓子の個包装にプラが使われていることもあり、私たちにとってもこれから取り組むべき課題です。今日の機会を通じて勉強したいです」と述べられました。あわせて最低賃金上昇やハサップ、働き方改革など、多くのテーマに一人で取り組むことは大変だからこそ、みんなで連携し力を合わせて対応していくために組合を役立ててくださいと呼びかけられました。
続いて講師として招かれた三井化学東セロ株式会社 環境パッケージソリューション室 室長の秋山聡氏が登壇。まず、海へ流出したとされるプラスチックが2・5億トンに上る現状と、2050年には海洋中のプラスチックが魚の量を上回るとの試算が出ているといった見通しについてふれられました。続いて「5ミリ以下の微細なマイクロプラスチックが有害物質を吸着すること」「食物連鎖に取り込まれることによる生態系への影響が懸念される」という問題点を紹介しました。
秋山氏によると、日本の廃プラスチック900万トンの処理の現状は、半数以上を占める524万トンがサーマルリサイクル(燃焼させ、熱エネルギーとして回収)によって処理されているが、CO2が発生することから、欧州では疑問視されているということです。
そこで日本の取り組みとして今年の5月31日に策定されたのが「プラスチック資源循環戦略」であるとのこと。これは「リデュース」(軽量化)、「リユース」(再利用)、「リサイクル」(物質を分解して再資源化)の3Rを考慮した取り組みのことで、特に秋山氏はパッケージメーカーとしてリデュース、リサイクルの取り組みについて述べられました。
これは容器包装の構成を見直すことで軽量化・薄肉化を実現し、プラスチックの量を減らす対応策のことで、独自に開発したフィルムのサンプルなども配られました。あわせて、モノマテリアル(単一素材)であることもリサイクルにつながるとのことで、受講者は自社の菓子の包材のフィルム構成や厚みを見直す必要性について考えさせられました。
一方で秋山氏は矛盾する問題点として、プラ問題に対応した新包材が、現状の包材にくらべてコストや性能、食品衛生面を完全には担保しないことについてもざっくばらんに触れ、改めてこの問題の難しさが浮き彫りになりました。
最後には受講者からの質問も相次ぎ、関心の高さがうかがわれました。プラ製品を完全に使わないのではなく、きっちりと回収して再利用するための方法は何なのか。菓子メーカーとして、自分たちができること、具体的にどうすべきなのかを考える大きなきっかけになる講習会でした。
大阪府菓子工業組合副理事長・村上信