三松堂
過去から未来へ届ける自店の味
当店は、「なまはげ」「あきたこまち」と「日本酒」が、全国的にも知られている東北の北部にある雪国秋田の地で、カステラ生地の甘い手焼き煎餅の専門店として、大正13年に創業致しました。
初代は戦前、山形県の農家の次男として生まれ、当時は家督制度もあり長男以外は家から出ないといけないということで、物資不足の時代、食べ物の商売なら食べていけると考え、その当時贅沢品だった小麦粉、玉子、砂糖を使って煎餅を作るお店に弟子入りしました。修行を終え独立を決意し、いざ出店場所を決めるにあたり、その当時は東北でも比較的に景気が良いとされ、また、秋田の方言でいう「いいふりこき」(見栄っ張り)で消費性向が強い県民性も考慮し、秋田市大町で開業しました。その後現在の秋田市中通に移店したと聞いています。しかしながら、創業時、全く知らない土地で商売を始め、戦中・戦後の混乱期を乗り越え、軌道に乗せるまでは大変なことだったと思います。現在は、創業当初から同じ配合で作る煎餅と和菓子の専門店として、四代目の私まで、営業しています。
近年では、これまで以上に原材料を吟味し、自家製餡にこだわっています。また、食品製造業では当然ですが、とにかく食べて美味しい和菓子を心がけて作ると同時に、季節感を大事にし、外観・菓名まで、お客様に満足していただける商品をお届けしたいと思い、日々精進しています。
そして、煎餅の他にも創業時から作っていたもので私の記憶に残っている味のお菓子を、こだわりの自家製餡と現代の技術・アイデアで、今のお客様にも受け入れていただけるよう、ブラッシュアップして復刻させています。復刻させたお菓子をお買い求めていただくと、初代から続く「三松堂」を褒めていただいているようで、嬉しいです。
これからもお菓子屋を続けていく上で、先代から引き継いだ商品を大切にし、新しい和菓子にも挑戦していくことが責務だと思います。その結果として、お客様にお菓子で「口福」を感じていただければ幸いです。
秋田県菓子工業組合青年部部長・後藤誠一