日光の水羊羹
日光二荒山神社で献菓祭
日光は江戸時代から東照宮、二荒山神社、輪王寺(二社一寺)の門前町として栄えてきました。門前には、土産物店が軒を連ね、その中に羊羹を専門に製造販売する店が何軒もありました。羊羹は菓子の中でも高級感があり、煉り羊羹は日持ちがするため、土産品として人気があり、多くの参詣者が買い求めました。日光は全国各地から、観光客が訪れますので、日光羊羹の名も全国に知れ渡りました。現在も江戸時代や明治時代創業の店が数店残っています。それらの屋号は、「○○屋」や「○○菓子店」では無く、「○○羊羹本舗」と店名に「羊羹」の名が入っています。現在は羊羹以外の菓子を販売していても、主力製品が羊羹のため、現在でも店名に「羊羹」を入れています。地元では「○○羊羹屋さん」という愛称で呼ばれています。
羊羹にもいろいろ種類が有り、水羊羹は夏の食べ物というイメージですが、日光地方では冬の食べ物として親しまれています。日光の水羊羹は水分量が多く、口に入れると、とろけるような触感が特徴のため、気温が高いとすぐに傷んでしまいます。冷蔵庫が普及していなかった昔は、室温が冷蔵庫並みの温度になる11月ごろから製造を始め、冬季限定の商品として販売していました。日光は冬の寒さが厳しく、雪も多いので家に閉じこもる事が多くなります。こたつに入って喉が乾いたとき、冷たい水羊羹は最適なおやつとして好まれ、日光地方では、冬の食べ物として定着してきました。その食習慣が代々受け継がれ、最近ではおせちの口取りの一品として欠かせない存在になっています。正月間近になると各羊羹店は一日中水羊羹の製造に追われています。
冷蔵庫が普及した現在では、各店とも年間を通して製造しています。観光客にも人気があり、日光を代表する土産品となりました。
日光二荒山神社は4月17日の弥生祭、日光東照宮は10月17日の秋の大祭の期間中、祭りの振神行事として、献菓祭を斎行しています。日光菓子製造業組合では両神社の献菓祭の飾りつけと撤下の奉仕作業をしています。栃木県内の菓子はもとより、全国各地の菓子が奉納されます。それらを神前に供え、菓業の繁栄を祈祷していただきます。祭の終了後に撤下をして、県内の児童養護施設等に贈呈しています。施設では毎年菓子が届くのを楽しみにしているようです。我々が丹精込めて作った菓子が施設の皆様に喜んでもらえることは、作り手として大変嬉しいことです。
栃木県菓子工業組合理事・三ツ山一明