他業者・同業者とのコラボ
和菓子の新たな可能性を求めて
当店は、三重県の伊勢神宮内宮参道のおはらい町に店をかまえる「藤屋窓月堂」という和菓子屋です。明治の初めから利休饅頭という紅白饅頭を看板商品として商いをしております。
昨年、改元とともに私に代替わりし、新たな活動として今年2つの新コラボブランドをスタートさせました。
まず一つは4月に始まった、三重県の県庁所在地である津のフレンチレストラン「株式会社ミュゼボンヴィヴァン」とのコラボブランドです。ワインやコーヒーにあう和菓子づくりをテーマにした企画で「月と犬」という名前を付けました。第1弾として、フレンチ特有のスパイスや、無花果のコンポートを使ったどら焼きを販売しています。
そしてもう一つは、伊勢市内のケーキ屋「株式会社フランフラン」と、和菓子と洋菓子の技術やアイディアの融合による、新しいスイーツの提案をテーマとした「ぼくたちのおかし」です。こちらはテイクアウトのわらび餅ドリンクを販売しています。また、当店の看板商品の利休饅頭に使用する餡を入れたマドレーヌを販売しています。
どちらも昨年から計画をしていましたが、コロナウイルス感染拡大が日本全体に広がっていく中でのスタートととなり、不安に感じることもありました。しかし、この影響の終わりが見えない中でも、お菓子の力を信じて少しでも明るいニュースを届けたいという思いから販売開始に踏み切りました。
見せ方として、監修とするのではなく、老舗菓子屋が新しいことに取り組んでいくという姿勢を表現するために、ブランドという形を選びました。宣伝は店頭に加え、SNS上で行い、若年層にもPRしています。反応として、インスタグラムに当店のお菓子を投稿してくださるお客様が増えていますので、やってよかったと感じています。
また、菓子専門店として、大手メーカーにはできないような、定番のお菓子にひと手間加えた商品開発を心がけています。
コラボ商品の狙いとしては、新しい提案による顧客満足度の向上と、話題性をつくることによって当社の認知度を高め、新規のお客様にも和菓子や餡に関心を持ってもらうことです。
当社の売り上げ構成は、観光需要も大きな割合を占めており、昨年と比べると落ち込んだ部分もありますが、地元のお客様に助けられ、おやつとしての需要や、彼岸などの催事のお供えは、昨年以上に反応があったように思われます。コラボに関しても、「次何するの?」との声も多く、次の動きに期待してくれているように感じています。
これらの取組は、始まったばかりでまだまだ未熟なものですが、今後もお客様から必要だと思っていただける店にするために、古くからあるものは大事にしつつも、時代に合わせたことにもどんどん取り組んでいこうと考えています。
三重県菓子工業組合伊勢支部・㈲藤屋窓月堂 代表取締役・吉尾雄介