各地の菓子店探訪
高知県菓子店の投稿

有田有為堂

100年を前に見えてきた課題

柿羊羹 有田有為堂は高知県の西の端、大月町弘見に店を構えてもうすぐ100年を迎えます。大正、昭和、平成、そして令和と4つの元号をまたぎ100周年を迎え、老舗の仲間入りをするにあたりこれからの課題がたくさん見えてきました。

 人口減少や少子高齢化、新型コロナウイルスの蔓延による観光客の激減など…このあたりは深刻ですが個人ではどうしようもない問題です。そんな日々の中で当店が抱えている1番の問題は原材料の確保です。

干物のような形で製造 当店の名物『柿羊羹』は寒天のなかに白餡と干し柿を練りこんで作っています。もともと甘柿に比べ需要が少ない渋柿は生産者も減り、すでに1年分の柿の確保が難しくなっています。そして地球温暖化も深刻で、柿の旬と干し柿に適した気候のずれが少しずつ大きくなってきています。そこで試行錯誤の結果従来の干し柿の形にこだわるのをやめ、薄くスライスをして干物のような形で製造したところ、種を取りやすくなり生産性が少し向上いたしました。一方で「ここの軒下に干し柿がずらっと並んだら冬だな、と思っていたからちょっと寂しい」と残念がる声も聞こえ、お菓子だけではない、地域の風景としての役割も担っていたことに改めて気付かされました。

軒下に並んだ干し柿 長く続くコロナ禍の中で何かできることはないか、と言うことで商工会や役場、地域おこし協力隊の皆さんの手を借りてマルシェや通販、ふるさと納税など、店売りと従来卸していたお土産屋さん以外での販売を開始できたことはとても良い財産になりました。特に今まで出店することのなかったマルシェでのお店以外での対面販売は柿羊羹の名前が認知されている、というのを肌で感じることができ、大きな自信につながりました。

 2代目は職人気質でうちに籠りがちな面がありましたが3代目は隣町で洋菓子屋を営み、生産者さんだけではないパイプをたくさん作り、後進の育成や小・中学校でのキャリア教育、地域の魅力の掘り起こしなどより良いお菓子作りの為に尽力してきました。もうすぐ行われる代替わりにあたり和菓子、洋菓子に囚われず「美味しいお菓子を作る」という使命を胸にこれからも地域に愛されるお店として営業していきます。

 高知県菓子工業組合宿毛支部・有田有為堂・有田彩乃

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