各地の菓子店探訪
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御菓子司小笠原

もちっと土佐文旦ゼリー

御菓子司小笠原 2017年春先、高知市の雇用創出の観点から新たな土産物となる加工食品開発を…と高知市雇用創出促進協議会より当組合に依頼があったことからこの商品の開発が始まりました。持ち込まれた「土佐文旦」「青切りみかん」の2つの題材に対して、組合所属の菓子店が試作品を持ち寄り13点集まりました。その提案した開発商品の候補の中から選ばれた2点のうちの一つが当店の「もちっと土佐文旦ゼリー」でした。

 土佐文旦は黒潮香る太平洋と四国山地に囲まれた温暖な高知県で栽培される県を代表する柑橘類のひとつです。多くは15㎝程度のサイズで、特徴は皮が厚くその実はぷりぷりでみずみずしく独特な爽やかな酸味の中にやさしさと甘さがあります。12月頃に収穫され倉庫でシートをかけて1カ月程度寝かせることでほどよい甘みが増すのだそうです。

もちっと土佐文旦ゼリー さて、「せっかく新商品を開発するのだから和菓子屋ならではのゼリーをつくりたい!」との意気込みで取り掛かりましたが、商品完成までにはおよそ1年かかり、20回を超える試作品と数えきれない試行錯誤がありました。例えば、当初は果肉だけの使用を考えておりましたが多くの方から「あっさりしすぎていて主張がない」との意見をいただき、土佐文旦の特徴でもある厚い外皮に着目し、ペースト状にして加えることでほどよい苦味をあわせて味に深さを持たせました。文旦の実(房)のままでは大きさが一律に揃っていないことから一度粒状にばらしたものを最終工程で容器に入れなおす等の手間と工夫も行いました。

 土佐文旦のもつ「酸味」「甘味」「苦味」をいかにして調和し美味しいと思ってもらえるお菓子になるか、自分達だけではもうよく分からなくなり、ある種の妥協も生まれてきそうになる中、高知市雇用創出促進協議会のメンバーの方からの助言もあって何とか完成にこぎ着けました。完成後は、開発についての公開セミナー等を通じて多くの方とのご縁が生まれたことも成果の一つです。高知空港での一週間の試食販売も予定数を大幅に上回る売れ行きとなりました。

 「もちっと土佐文旦ゼリー」は多くの学びやご縁を与えてくれた当店を代表する商品です。

 高知県菓子工業組合副理事長・御菓子司小笠原・小笠原健一

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