楠菓子店
胸に染み入る温かい絆
うららかな陽射しのなか、国道3号線を北上し、目的地に向かい右折すると、緑が深まり木々の濃い香りが鼻腔にグッと迫る。そんな自然豊かな日置市東市来町養母にある「楠菓子店」を訪ねました。
店主の楠優氏は2代目。先代が昭和32年に開業した菓子店を昭和42年に継ぎました。
店頭にはたくさんの種類の菓子が販売されていますが、訪問した時期は、冬から春まで多忙を極めた「苺大福」の販売が、ようやく落ち着きを見せた頃でした。
何と言っても看板菓子は、テレビ取材も受けるほど人気の、地名を冠した「養母(やぼ)まんじゅう」です。試行錯誤の末に、黄身あんの中に栗を入れることで、よく売れるようになったとのことです。
お店はご夫婦二人で営んでいますが、道路向かいでパン屋を営む姪御さんが、道の駅「こけけ特産品販売所」「江口蓬莱館」にも、一緒に卸してくださるとのこと。また、紫芋餡をパイ生地で包んだ「パイマン」は、曽於郡で農家を経営する姪御さんから仕入れた紫さつま芋で作っており、品質は折り紙付き。ご親族の温かい絆を感じさせられます。
そして濃厚な味わいの「カステラ」は、ご自分で養蜂している日本ミツバチのハチミツが入っていて、色も濃く優しい味わいです。「自分で養蜂?」と驚く私に、「見てみるね」と家の周りをぐるっと回り、巣箱を見せてくださいました。この春分蜂し、現在巣箱の数は6箱。ブンブン飛び回るミツバチを愛おしそうに紹介してくださるので、「刺されたことは無いんですか」とお聞きすると「何度もあるよ」とニッコリ笑顔。
氏が、「自分はお菓子をただただ作るだけで、この人がカットしたり、包んでくれたり、大変な作業をしてくれるからありがたい」と奥様を思いやれば、「いえいえ、私はいくらでも包みます。あなたが元気で作ってくれるから助かります」と奥様が答えます。
互いを思いやる愛情の美しさ。親族の絆の強さ。ああ、この温もりがお客様の心を掴んでいるのだなと、胸に染み入りました。これからもますます元気な笑顔で頑張っていただきたいと思います。
鹿児島県菓子工業組合事務局長・惠島理子