備えあれば憂いなし 親子二人三脚の心意気
今回ご紹介するのは、千葉県茂原市の「三矢菓子店」さんです。代表の鈴木豊社長は、千葉県菓子工業組合青年部部長であり、全菓連青年部の前関東甲信越ブロック長を務められ、私にとってはブロック長の先輩でもあります。お父様の鈴木豊彦氏により昭和四十八年六月に創業され、来年五十周年の節目を迎えられるお店です。元々お父様のご実家は、千葉県の御宿にて菓子店を営んでいた「海月堂」でしたが、三男という事で茂原市にて独立開業されました。
他社より甘さを控えめにした、こだわりの製餡で生まれた餡子を厚みのある生地で包んだどら焼きは、昭和五十九年の菓子博大賞、平成二十五年に橘花榮光賞を受賞されており人気が有ります。また、上生菓子は茶道の先生方に常時お使い頂くなど評判が高く、季節に合わせてラインナップされております。
二代目である、鈴木社長は日本菓子専門学校卒業後、東京神田の「庄之助」一年間修行されておりましたが、世襲でよくある「このまま菓子の世界で良いのかな?」という疑問から一度別の職業に就かれますが、慣れない業務で疲れ果てた所でお母様が「戻ってくれば?」という一言をかけてくれた事で決心がつき入社されました。その時の思いを「救われた」と表現された社長の胸の内は、世襲の家系で跡継ぎが決意する一番ありがたかった言葉であったと思います。そこから一念発起、お父様から技術や心を教わりながら菓子製造技能士二級・一級と、ものづくりマイスターも取得され千葉県内小中学校や専門学校にて餅菓子などの指導をされるまでになりました。
鈴木社長のお人柄は、温厚というかマイルドな印象ですが、小中学生時代に剣道をされており剣道初段を拝受さてる腕前で、高校は剣道の名門校に進学するも剣道部には所属せずバンド活動を開始され、専門学校時にはライブ活動もされる腕前を披露されるにいたるという、同年代の私には大よそ同じ道を歩んだ方で改めて共感させて頂きました。この方は、芯が強く自分の目指した事にはブレ無く芯を通す方と思いました。近年は、地元消防団に十一年所属され毎年六月にある大会(現在コロナ禍により大会は中止)の為、日ごろ訓練を欠かさず大会の有無に関わらず地元の方々を身もって守っている姿には、敬服をするばかりです。
その様な社長の、座右の銘をお尋ねすると「備えあれば憂いなし」と即答されました。その中にはいくら備えても無駄になる事はないとの思いがある。例え想定した障害やクレームがあっても考えられる予防策を前もって考える、そこで使われなかった考えも後日役に立つという、考えをお持ちでした。まさにリスクマネジメントと言え経営者であれば誰しも忘れてはならないと改めて思いました。
現在も親子二人三脚で、喧々諤々ありながらも美味しいお菓子を提供されている三矢菓子店と、千葉県での後進の方々への指導など今後の和菓子の持続だけではなく改革をもたらすであろう、鈴木豊社長のご活躍には学ぶべき点が多く大変有意義な時間となりました。
全菓連青年部関東甲信越ブロック長・生田剛