各地の菓子店探訪
大阪府菓子店の投稿

菓匠館 福壽堂秀信

コロナ禍で様々な取り組み

 今回お伺いしたのは、大阪の南地・宗右衛門町にて昭和23年に創業し、現在は大阪の高級住宅地でもある帝塚山に本店を構える「菓匠館 福壽堂秀信」さんです。年末のお忙しい中、専務取締役の岡本將嗣さんにお話を伺いました。

〜コロナ禍のここ数年はいかがでしたか?〜
 コロナ前より儀礼ギフト、特に中元や歳暮の慣例が薄れており、様々なお菓子をバランス良く詰めた、ある種無難な箱菓子への需要が衰退しているという危機感はありました。儀礼ギフトは日本の良き文化であるものの、時代に合わせてよりパーソナルなギフト需要に弊社も応えていかなければならない。それこそ、私たちが創業以来こだわり、得意としてきた職人の手技が生かせるのではないか。そういった考えを巡らせている中、コロナ禍となりました。とにかく何か行動しなければならない。そう思い、今まで福壽堂秀信としてやってこなかった様々なことにチャレンジしてきました。

「ふくのたね」のお菓子〜具体的なお取り組みを教えてください〜
 まずEC販売強化に着手しました。以前よりEC運営はしていたものの、パンデミックの中でお客様にご来店いただく以外の選択肢を整えなければならないとの思いから、通販限定商品の開発を行いました。おかげさまで通販限定の「あんこプリン」はご好評いただいており、帝塚山本店の茶寮「季」(とき)で人気のパフェも通販でお届けできるよう開発したところ、こちらもありがたいことにご好評いただいております。

 その後、ご縁ありスポーツ羊羹の開発を行うこととなり、"さらっと飲めるようかん"ANDO_(アンドゥー)が完成しました。スポーツのみならず、仕事や勉強時のエネルギーチャージもできるとして、メディアでもご紹介いただきました。新たな市場と顧客開拓、そして"あん"の美味しさを知っていただく機会づくりになっていると実感しています。

 そして、一番最近の取り組みとしては、2022年10月に新ブランド「ふくのたね」を立ち上げました。弊社は75年前に大阪の南地・宗右衛門町で創業しました。当時の宗右衛門町は大変格式の高い花街で、弊店の前にも料亭があり、文楽や舞踊、茶華道など洗練された浪花文化の土地柄でした。そのような中、私たちは育てていただき、手の技を鍛えて参りました。今では宗右衛門町は随分と変わりましたが、私たちの創業以来の想いは変わりません。この現代において、私たちが地域に育ててもらい培ってきた技術、あるいは歴史文化も含めて広く発信していきたい。そういった想いから新ブランドの立ち上げに至りました。技の研鑽と継承だけでなく、革新していくために「次世代おはぎと創作和菓子」を軸として展開しています。まだ日々改善の繰り返しですが、今後「ふくのたね」というブランド名に込めた想いである「伝統文化に裏打ちされた和菓子作りの矜持を持ちながらも、今までの常識にとらわれない新しいたねを蒔き、育て、花を咲かせよう」を実現すべく精進して参ります。

帝塚山本店〜今後の展望についてお聞かせください〜
 大阪の南地・宗右衛門町という伝統ある格式高い街で創業し、その地に育てていただいたことに大きな感謝と思い入れがあります。たこ焼きをはじめとする粉もん文化も立派な大阪文化ですが、それだけではないかつての上質な文化を改めて伝えていかなければならないと思っています。2025年の大阪・関西万博はその絶好の機会です。組合内外や地域を通じて様々な方と手を取り合い、大阪の文化を世界に発信していけるような和菓子を作りたいと強く思っています!

 文化と歴史、地域にしっかりと敬意と感謝の念を重んじつつ、未来に向けての確かなヴィジョンを持って行動している岡本専務の姿勢に感銘を受けました。大阪・関西万博に向けても近畿ブロックとして取り組んでいきたいと思います!

 全菓連青年部近畿ブロック長・竹本洋平