各地の菓子店探訪
大阪府菓子店の投稿

本まつばや

お客様に喜んでもらえる和菓子を

松下壮太郞さん

 今回は、1927年に四天王寺東門筋にて創業し、現在は天王寺区真法院町に本店を構える「本まつばや」さんにお伺いしました。お客様がひっきりなしにご来店されるお忙しい中、次期4代目の松下壮太郞さんにお話を伺いました。

〜本まつばやさんのお菓子作りへのこだわりを教えてください〜
 備中産小豆を中心に5種類の小豆を使用しています。他の素材にもこだわっていますので乳製品や卵以外の動物性原材料を使わない和菓子を作ることで、素材本来の美味しさを感じて頂きたいと思っています。

本まつばや 外観

〜お店作りや、おもてなしへのこだわりはいかがですか?〜
 当たり前のことを当たり前にできるようにしています。例えば、お店の掃除も定休日には毎週朝から2時間ほど隅々まで掃除していますし、どのお菓子も少しでも美味しくならないかなと日々研究し勉強しています。

〜「大阪ええYOKAN」プロジェクトへ参加された経緯を教えてください〜
 大阪での若い人の和菓子の認知度はとても乏しいと感じています。例えば、友人から「和菓子は嫌いやけど、おはぎと大福はよく食べるねん」とか「どら焼きって和菓子なん?」など聞かれることがあり、こちらは当たり前のことでも思っている以上に知られていないなぁと驚きました。なので、この「大阪ええYOKAN」をきっかけに、若い人にも和菓子をもっと認知してもらえたらなと思って参加しました。メンバーには職人だけでなく色々な方がいるので、美味しさだけでなく日持ちなど含めた安定性だったり、デザインだったり、売り方だったり、多角的にみんなで意見を出し合い商品価値と自分自身を高めていきたいと思っています。

本まつばや 内観

〜これからの和菓子業界をどう変革していきたいですか?〜
 世間では「和菓子って美味しくない」、「あんこって不味い」という人が少なくなくて、理由を聞くと、和菓子ってパサパサしているとか、粒餡の豆が固くて美味しくないなどと耳にすることがあります。でも、僕が知っている和菓子は、パサパサもしていないし、粒餡の豆もふっくら柔らかいんです。食べる和菓子によってこんなにも印象って変わるのだなと。
自分が美味しいと思う和菓子を食べてもらった上で、その人が美味しくないというなら納得がいきますが、昔の食べた印象だけで美味しくないというレッテルを貼られるのは、和菓子に携わっている人間としてとても悲しくて、悔しいです。なので、今後、そのような人が増えないため、少しでも印象を変えるために、「和菓子は美味しい」と思ってもらうために、美味しい和菓子を届けていきたいと思います。

 松下壮太郞さんとお話ししていると、いつも背筋が伸びる感じがあります。とても純粋に、まるで日本刀のように切れ味の鋭い着眼点と信念を持ち、お菓子と人に向き合っている素晴らしい姿勢を感じ、同じ菓子業界人として背筋が伸びるのだと思います。

 「大阪ええYOKAN」プロジェクトは「大阪・関西万博を機に大阪みやげのジャンルを作ろう!」という趣旨のものですが、彼は常にお客様に喜んでもらい、和菓子を好きになってもらいたいというぶれない信念を持って商品開発をしておられます。当たり前のことを当たり前に行うことの難しさと大切さを、改めて認識させてもらった貴重な機会となりました。

 全国菓子工業組合連合会青年部部長・竹本洋平