各地の菓子店探訪
秋田県菓子店の投稿

晩梅

昔ながらの味を守って、地元に感謝

 秋田県北秋田市は秋田県の北部にあり人口は30,000人弱ですが面積は全国の市町村中15位と広く樹氷の森吉山など自然豊かで、日本一の大太鼓や昨年世界遺産に認定された縄文遺跡群の伊勢堂岱遺跡があります。気候は内陸性で夏は暑く冬は寒く雪深い所です。

 現在の店舗は先代社長が和洋菓子店として営みました。大火などを経て2度移転して昭和36年に現在の地に至りました。新潟で修業後当地に戻り和菓子店から始まり、洋菓子やデニッシュパン・量り売りのかりんとうや柿の種を売っていたのをなんとなく覚えております。父(先代社長)と母が小さいながら店舗を切り盛りしておりました。

 晩梅という屋号には面白い話があります。元々は『髙橋清月堂』という屋号でしたが当時店で売っていたのが御婆さんだったために地元の人は皆「ばあさんの店」に行くと言う事を方言で「ばんばえ」と言って誰も『髙橋清月堂』と呼んでくれませんでした。そこで屋号を「ばんばい」とし、和菓子屋らしい夜の梅を意味した『晩梅』にしたということです。

 昭和48年洋菓子チョコレートケーキのル・デセールを試作販売を開始し翌49年に新店舗に建て替えをし52年ガスパック導入を機に本格販売を開始いたしました。そのル・デセールが現在の晩梅を支える商品となっております。クルミ入りのココアスポンジにチョコレートを上にかけた単純な商品で、とても軽いお菓子で一つ食べても全然物足りない感じがします。思わずもう一つ食べてしまうチョコレートケーキが完成しました。発売から間もなく50年になろうとしてますが、勢いは衰えず売上は全体の40%を超えております。

ル・デセール お盆やお正月に帰省したお客様が懐かしいと言いながらお買い求めいただきます。そして「昔と変わらずおいしい」とおっしゃってくださいます。大変うれしいことです。しかし本当のことを申し上げますと数年毎に味を変えております。時代に合った味に変えることはお客様の口の変化に合わせて味を変えることによって、昔ながらおいしいと思われる味を目指しております。昔のままの味付けは子供から大人になって口が肥えてくると昔はおいしかったに変わります。お客様の成長と速度を合わせて味に変化が必要と思います。

 毎日運のいい30人程度のお客様にはそのキレ端を無料で差し上げております。わざわざ切れ端を買いに来られるお客様もいらっしゃいますが切れ端は売りません。おまけです。こんな小さな恩返しを皆さんにお返ししたく思います。

 秋田県菓子工業組合・合資会社晩梅代表社員・髙橋伸幸