高松市 御菓子処 湊屋
「温かみ」が支える店舗
夏の暑さもここ数日で一気に様変わりし、しとしとと10月の秋雨に打たれながら初秋の訪れを感じる今日この頃、まだまだコロナウイルスの猛威が引かないなか、今回は久しぶりに昨今のコロナ禍に打ち勝つべく積極的に店舗運営をされているお店様への取材を敢行。
今回お邪魔しましたのは1953年(昭和28年)創業の高松市にお店を構えておられます「御菓子処 湊屋」さんへ突撃訪問。JR高松駅から程近くに店舗を構えておられる瀬戸内海がすぐ見渡せる絶好の場所で69年間、親子、孫と数世代にわたりお客様に親しまれ、またオフィスビルも多く構えている場所から多くの企業様にも長年愛され続け、来年には創業70周年という記念すべき節目を迎えられる湊屋さん。代々、受け継がれてきた銘菓から現代の流れに合わせた幅広く満足度の高い菓子作りを日々目指されているのは、3代目店主の佐藤亮太郎さん。お若い、そして背が高い、イケメン、そこに現在はプラス育メンでおられる佐藤さんが湊屋を牽引されておられます。初代がシベリア抑留から引き上げられて高松のこの地でご商売を始められたとか。そして2代目、現在の3代目に至る今日まで、菓子作りを通じて人と人との繋がりを最も大切に、そのお手伝いを積極的に取り組まれておられる店舗様です。その「温かみ」が一つ一つ作り出される商品にも奥ゆかしさを演出されているのではないかと感じ得ております。和洋問わず幅広く取り揃えておられ、時に繊細に、時に大胆に、現在では3代目のオリジナリティを前面に追求した品々がメディアにも取り扱われる様になり、探求心溢れる3代目の言葉から満ち溢れる自信と魅力を感じ取りました。
コロナ禍に打ち勝つ大胆な行動
今日もなお、コロナウイルスの蔓延に伴い、全国多くの店舗様がまだまだ自粛しながらの店舗運営をされておられる中、本店を大胆に店舗改装されるという行動に。今までの趣あるアンティークさを感じ取れる重厚な店舗から180度どころか360度…あっ、一周してしまいましたが、それくらいガラッと店舗のイメージが様変わりし、多くの市民が驚きを隠せないほどに華やか、かつポップな店舗内外に地元放送局からもニュースに取り上げられるほど。正直…最初拝見した時はこれにはびっくらポンでした~♪「ふりきったなぁ~」って感じでその時は圧倒されたのを思い出しました。しかしながら3代目はその辺りについては至って冷静で本来これが一番やりたかった姿であると。コロナ禍により長きにわたり、色々なところで元気がない環境に一筋の明るい光になれば…という3代目の決心のある言葉に「カッコいい~」と勝手に感じておりました。店舗看板から内装、そして商品の化粧箱においては瀬戸内海とそこに広がる広大な青空をイメージしたスカイブルーを基調とされており、カジュアルにどの世代にも気軽に足を運んで貰えるよう、木目調の内装も「温かみ」を感じさせてくれます。
そしてこの大改革は店舗だけではなく商品にも伺い知れます。日々我々が店舗内で取り扱う品々にはバランスというものがあり、代表商品の様に決してブレてはいけない商品と時代に合わせてボトムアップしていく商品、また新たに開発・挑戦していく商品があると思います。
3代目は商品開発、それに伴う設備投資にも積極的にこだわり、公的機関の支援財団にも足しげく通い、そこで情報を得て吸収し、アクティブに動かれております。商品開発においても和洋の概念も外してこれからの時代、世代に真摯に向き合い、取り込んでもらえる商品を開発。なかでも「iroha」はベルギー産のチョコレートやドライフルーツ、ナッツを羊羹と見事にマリアージュ、素材を前面に押し出した新感覚羊羹は種類も豊富でお好きな単品買いからスカイブルーの化粧箱に入れた進物用もご用意。幅広く活用出来る湊屋の一番推し商品です。まだ他にも今までの湊屋になかった新しい商品が日々お客様に受け入れられていくなか、ここで決して忘れちゃ~いけない湊屋創業時から受け継がれてきた代表商品「栗林のくり」の圧倒的な存在感は未だなお健在!!この焼き菓子、大栗・中栗・小栗とあるなか、特に大栗の大きさにはとにかく驚かされる一品。直径16センチ・重さ約580gという超メジャー級♪大きいからといって決して大味にはならず、上品な白餡は程よい甘さで栗も期待に応えてしっかり入っており、ホクホクと芳醇な味わいに切り分けてシェアして食すればきっと会話も弾むことでしょう。私の場合はきっと独りで延々としゃべり続けてしまうことでしょう。
バトンを託す側とバトンを受け取り邁進する側の信頼
ここまで店舗改革や商品開発を積極的に取り組まれている3代目のそばには今なお、常にご両親も一緒に店舗に携われておられます。ここまで変えるにはおそらくいろんな想いがあられたかと思います。しかも時期はコロナ禍全盛期、代表を任せて社長としての見え方、そして何より唯一無二の自分達の息子としての見え方、日常のお仕事の中で様々な角度から見えてしまう先代のお気持ちは胸中察するばかりで御座います。しかしそれでも常に前を向かれ、息子を信じ、決して前に出過ぎることなくそっと寄り添い、手伝われておられるお姿に私はいつも店を訪れる度に感銘を受けるばかりで御座います。そして今はまだ幼な子では御座いますが、次期4代目もこれから親の背中を見て決心してくれることで御座いましょう。そこにも託す側と託される側での「温かみ」が店舗を支える秘訣ではないかと今回の取材の中で実感した次第で御座います。
嗚呼、うちの店もこうでありたい…
香川県菓子工業組合青年部長・桑田剛史