各地の菓子店探訪
香川県菓子店の投稿

「コツコツ」背伸びせず

高松市「御菓子司 陣屋」

土居裕明社長と奥様

 梅の蕾が膨らみ始め、日差しに春の訪れを感じ始めるとある2月の午後、今回は久しぶりにコツコツとお店を切り盛りされているお店へ突撃取材♪今回お邪魔しましたのは1977年(昭和52年)高松市で創業された「御菓子司 陣屋」に訪問。賑わい漂う高松市街地からは少し離れたひっそりとした佇まいの店舗はどこか上品さ、気品さえ感じさせる香川県を代表するお店で御座います。ここで日夜製造に励んでおられる2代目土居裕明社長にインタビューを敢行。社長の温厚で柔らかな優しい語り口調がそのまま菓子に表現されており、いつも店に入らせて頂く度にはわたくしの卑しき心も浄化されるほど。お話を聞くところによると最初は香川県三木町と言う場所で初代お父様が菓子と異なる商品を販売しながら並行して菓子も製造販売されていたとか。そしてコツコツと御商売を続けてこられながら満を持して現在の高松市内に昭和52年に移られて「陣屋」として改めてスタートを切られる事に。当初は洋菓子をメインに販売されておられたそうですが、その当時は冠婚葬祭や彼岸や節句など日本の季節歳時記に伴い和菓子の需要が高かった事や今の時代でもそうですが、原材料の高騰化で季節に応じて様々な材料を多用する洋菓子を将来的に継続していく事が難しくなった事もあり徐々に和の方へシフトチェンジされていかれたそうです。しかし!こちら陣屋さんで代表商品とされるのが「和三盆製 釜焼加寿貞良(かすてら)」なのです♪生地に香川を代表する特産物の讃岐三盆糖を惜しげもなく贅沢極まりなく使用し、その味わいはしっとり&ふんわりで甘さも程良く上等、おまけに分厚さもばっちりOK♪これを一言で言えば上品なのです。今日のキーワードです「上品」そして「コツコツ」わたくしもまだまだ修行の身、しっかり見習わなければなりません。地道にコツコツと作り続けてこられたこの「加寿貞良」が陣屋さんを一気に讃岐名物にまでスターダムに押し上げた究極の逸品なのです。ただ、これほどの商品、どこにでも安易に販売される物では御座いません。県を代表する風光明媚な観光地や各種交通機関の売店、百貨店でのみ手中に収める事が出来るのです。ほかにも王道の加寿貞良以外に抹茶の風味を効かした抹茶のかすてらやコク深い味わいが特徴の白下糖のかすてら、そして1か月毎に味わいが変わる季節のかすてらは取材をした2月はバレンタインも意識しながらのチョコレート味♪、これがまた美味しいので御座います♪3月は桜のかすてらに変わるとか。毎月変わる季節のかすてらは多くのお客様が今か今かと待ち遠しくされるほど、取材後には思わず購入してしまいました。もちろんお家に帰ってから誰にも食べられることなく、ひとりで贅沢一本食べ♪完食です。

和三盆製釜焼加寿貞良(右)と抹茶かすてら(左)

 また陣屋さんには加寿貞良の他にも「献上栗」という饅頭が御座います。こちらは江戸時代、高松藩松平家が栗林荘(現在の栗林公園)で収穫した栗を将軍家に献上したところからその想いを馳せて作り上げたのがこの献上栗。ここでも生地には和三盆糖が使用されており、上品な味わいの白餡は決して栗の風味を邪魔することなく程良い甘さに仕上げられており、中心部にはこれも贅沢に栗が丸1個包み込まれており、これはご賞味された方々は至福のひとときを感じられた事間違いナッシングです。こちらも今日の陣屋さんを代表する一品まで昇りつめたスターダム的商品なのです♪加寿貞良とのお詰合せギフトは冠婚葬祭や帰省に往来される際のお手土産など、時には大型店舗から臨時に販売のご依頼が来るほど今や陣屋ブランドは香川県民に根強く浸透されるまでに親しまれることに。

白下糖のかすてら(左)と季節のかすてら(右)

 ではその秘密一体はなにか…と社長の語りを聞きながら感じたことは決して背伸びをせず、今日のキーワード「コツコツ」です。決して多くない限られた作業人数で懇切丁寧に出来る範囲内で商品を育んでこられた処ではないかと感じました。逆に背伸びして事業を拡大してしまうと今まで店を愛して戴いたお客様にサービスが行き届かなくなる事を常に気を付けておられ、目前に居られるお客様のために従業員皆さんが全力で菓子作りに正対されている処が陣屋の魅力ではないか、厳しく長く険しき道のりを歩まれながらもそこは社長ご夫婦の常日頃の人柄の良さ、満面の100%の笑みでお客様をお迎えされる「商いの原点」ではないかと実感致しました。土居さん♪こんな感じで精一杯書かせて頂いております。店内の販促用のPOPなどは現代のパソコンフォントではなく、奥様がこれも丁寧に描かれた直筆タイプのPOPはどこか懐かしさがあり、そして温かみも感じ、店内全体を優しい雰囲気に包み込んでおります。そのせいかお客様の年齢層が非常に若いイメージがわたくしの脳に残っているのです。もちろん創業当時からのお客様も多くおられますが、何気にある販促物や販売商品やエコバック等のパッケージング、空間を上手く使われた店内装飾を見る限り、若いお客様でも気軽に入って来られる設えはまさに必見です♪

奥様直筆の販促用POP
店内装飾

 コロナも完全に終息したか否かまだ分かりませんが、世の中は完全にリスタートしている今、そんな中でも陣屋さんは決して慌てることなく、出来る事を確実にやっていく、懇切丁寧に目の前のお客様を満足させるご商売、この決してぐらつく事無く、凛とした店舗のお姿はまさに「王道」のご商売ではないか、今回取材をしていくうちに大変うらやましく感じました。前回取材した同じ高松市の湊屋さんに続くわたくしの最後の台詞…嗚呼、うちの店もこうでありたい。

 香川県菓子工業組合青年部長・桑田剛史

店舗データ

御菓子処 陣屋
香川県高松市福岡町4-13-21
TEL:087-851-8368
営業時間 8:30~19:00