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「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を菓子屋が読んだら

書店に溢れ出ている「ドラッカー本」 2009年12月に第1版が出て、現在(2011年1月)で25版、400万部が既に売れたという。書店に溢れ出ている「ドラッカー本」の中でも断トツ、トップクラスのヒット本となっている。今年(2011年1月)の菓子業界新年会の理事長挨拶に使われ、厚生年金基金理事会の中でも、或る理事から『もし高校野球の…』が会社の事務室に20冊以上が積まれていて、「各自、これを読破して感想を記して出せ」と社長命令のようです。との話があった。社長も驚いた様子だが、この本は、本当に意表を突いている。著者の岩崎夏海も立派だが、取り上げたダイヤモンド社編集部の慧眼に流石と敬意を表したい。

 『もし高校野球の…』は、いま流行の経営学書を「小説」仕立にしている。表紙や幾枚の挿絵は、人気作家(だろうと思う)ゆきうさぎを使った。表題に高校生とあるから、まず女子校生徒が手に取ったのだろうが、すぐ大人の手に渡ったのではないだろうか。

 まさに、「もしドラ現象」進行中である。

 菓子屋の社長やプロマネさんも、1度や2度はピーター・F・ドラッガーに挑戦したはずである。しかし、膨大、邦訳だけで40冊、世界では対話も含めると100冊以上が出版されている。どこから手を付けていいのやら、途方に暮れて、日本では一番有名な『マネジメント』を読もうとするのだが、全部は頁数が多すぎるし、せめてエッセンシャル版をと、思い、買った儘、なのではなかろうか。それほど菓子の経営は忙しいのである。(言い訳)。

 それを野球部の女子高校生のマネージャーがドラッカーを『マネジメント』読みこなし、野球部を定義し、都立の進学校野球部を「甲子園に連れて行く」という明確な目標設定を行い、実践し、幾多の問題解決をしながら、悩みながらも、遂に甲子園出場となって結実するという物語である。小説だとわかっていても、唸ってしまう。

 小説の内容は、ご自身で読んで頂くとして、ドラッカーの『マネジメント』の肝のところを、女子マネージャーがどのように、野球部に持ち込んだのかを、恥ずかしながら、教えて貰おうと思う。(マネージャーは日本語、普通マネジャーというのだそうである)

1、現状分析、ビジョンを言い現わすと、帰ってくる反応。

 部員23名だが、練習には5、6人しか来ない。

 甲子園の話など、全員、無理、無理。

 そこで余計に燃える、マネジャーの資質。

2、マネジャー資質とは、才能ではない、真摯さである。

3、野球部とは何か。何であるべきか。定義する。

 感動! 顧客が野球部に求めているのは「感動」である。

 野球部とは、顧客に感動を与える組織である。

4、企業の目的、使命とは何か。野球部の目的、使命とは。

 「顧客を満足させること」

 野球部の場合、野球部員も「顧客」である。直ちに顧客たる各部員を、まず知ること、分かること。迷ったら、必ずこの本に帰る。答えは、必ずこの中にある。

5、野球部のマネジャーの仕事とは何なのか。

 企業の目的は、顧客の創造である。従って、企業は二つの、そして二つだけの本来的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。

 マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。(ドラッカー)

 真のマーケティングは、顧客からスタートする。すなわち現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいかを問う。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」。(ドラッカー)

 こうして、女子マネは「マネジメント」して行く。部員の欲求、価値を知り、部員が自分は一体どこまでの器であるか、野球部のどこに自分を役立てる場所が存在するかを見極める作業であった。友人の女子マネが部員全員と面談する。

6、野球部の成果とは、責任を持たせること。

 マネジメントは、生産的な仕事を通じて、働く人たちに成果を上げさせなければならない。どうやったら野球部員に成果を上げさせるか。

 働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が不可欠である。

7、野球部の試合の魅力は何か、練習になくて、試合にあるものは何か

 ―競争 ―結果 ―責任

8、チーム制の導入

 23名の部員を6名のチームに分けた。部員たちの現実、欲求、価値に応えることの効果の大きさと、マネジメントがそれを果たすこと。

 こうして、女子マネは、「マネジメント」して行く。

9、どうしたら野球部を変えられるか。イノベーションだ。

 イノベーションの戦略は、既存のものはすべて陳腐化すると仮定する。したがって既存事業についての戦略の指針が、よりよくより多くのものであるとすれば、イノベーションについての戦略の指針は、より新しくより違ったものでなければならない。イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放できる。(ドラッカー)

 野球部がイノベーションを実践するためには、まず、既存の高校野球は全て陳腐化すると仮定するところから始めねばならない。その上で、高校野球の古いもの。死につつあるもの、陳腐化したものを、計画的かつ体系的に捨てていく必要があった。

 さて、野球部の女子マネはどうしたか、野球部の場合、それを「送りバンド」と「ボール球を打たせる投球術」とした。こうして、驚くべきことに、ドラッカーが女子マネによってマネジメントされ、イノベーションが続けられる。

 ここで菓子屋として、重大な提案である。今後菓子界は激変する。ドラッカーを読むだけで、実践がなければ沈没する。問題意識までは、持つのだが、具体的な対策、計画的、体系的なイノベーションは困難である。どうしていいかわからない。

 そこで、社長、専務の責任は、経営してくれる人材、プロフェッショナル、マネジャーを見つけ、直ちに自社の経営、立て直しを依頼することではないか。

 ビジョンや経営理念を伝えて、今後の経営をどうすべきか、一緒になって考える。

 新しいタイプのプロマネジャーを採用することが必要ではないだろうか。

 「もし、ドラ現象」はこれを菓子屋に示唆してくれていると、真摯に考えることではないか。一読、再読してほしい。

 大阪府菓子工業組合副理事長・中島孝夫

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